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寄生虫屋が語るよもやま話・7
先生,実習が始まります!—糞線虫症
著者: 太田伸生1
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院・国際環境寄生虫病学分野
ページ範囲:P.796 - P.797
文献購入ページに移動小さくて美しい糞線虫であるが,臨床医学的にはやや面倒なことを起こす.寄生線虫の仲間は原則としてヒト体内では増殖しない.糞線虫は人間の小腸で幼虫を産み,通常はそのまま糞とともに体外に出ていく(図).しかし,人間の側が少しだけ体調がすぐれない場合はそのまま体内にとどまって発育し,成虫になる.自家感染といわれる現象である.その結果,一度感染するとエンドレスに人間の小腸の中に居座り,何十年にわたって家主と交友関係が持続することが多い.免疫状態が低下した人では自家感染の程度が特に激しくなり,体中に糞線虫が充満する播種性糞線虫症も起こってくる.喀痰にも幼虫がたくさん排出されるなど,場合によっては致命的である.
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