文献詳細
寄生虫屋が語るよもやま話・8
屈強なアフリカの青年も嫌がる恐怖の検査法—オンコセルカ症
著者: 太田伸生1
所属機関: 1東京医科歯科大学大学院・国際環境寄生虫病学分野
ページ範囲:P.922 - P.923
文献概要
そのイベルメクチンが大いに威力を発揮したのがアフリカのオンコセルカ症対策である.回旋糸状虫というのが和名である.同じフィラリアでもバンクロフト糸状虫と違って成虫は皮下組織に寄生していて,ミクロフィラリアという幼虫が組織中を徘徊する.最も悲惨な症状はミクロフィラリアが眼球に至って失明をもたらすことである.このフィラリアはブユが媒介する.ブユはきれいな水で繁殖する昆虫であるが,アフリカのサバンナ地帯では,河川流域で発生し,そこでオンコセルカ症が多発する.河川盲目症という名前の由来である.乾燥したサバンナ地区でも河川沿いでは農業耕作が可能なのだが,そこにはブユがいて,オンコセルカ症がまん延するために農地を放棄せざるを得ない.筆者もニジェールの乾燥地域をとうとうと流れる大河ニジェール川を見てきたことがあるが,水も土地もあるのに耕作できない現実に言葉がなかった.大村先生のイベルメクチンのおかげで,その地域のオンコセルカ症の流行状況は大幅に改善している.
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