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文献詳細

雑誌文献

臨床検査61巻10号

2017年10月発行

文献概要

増刊号 呼吸機能検査 BASIC and PRACTICE Part3 フィジカルサイン&病態で読み解く呼吸器疾患 2.拘束性換気障害

肥満症

著者: 高谷恒範1

所属機関: 1奈良県立医科大学附属病院中央臨床検査部生理循環機能検査室

ページ範囲:P.1305 - P.1313

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はじめに

 肥満症を理解するために,まず,肥満について解説します.

 肥満とは,太っている状態であって,疾患ではありません.肥満は“体脂肪が必要以上に増えた状態”を指しますが,体脂肪率の測定には困難が伴うため,指標として体容積指数(body mass index:BMI)が世界的に広く用いられています.世界保健機関(World Health Organization:WHO)による肥満の判定基準では,BMI 30以上が肥満です.一方,わが国ではBMI 25以上を肥満とすることが,日本肥満学会によって定義されています(表1).なお,近年では,体脂肪計(体組成計)が一般にも普及し始め,体脂肪率によって肥満の判定を行う場合も増えるようになってきています.

 一方,肥満症とは肥満に起因,関連する健康障害を有するか,そうした健康障害が予測される内臓脂肪が過剰に蓄積した状態で,減量治療を必要とする状態のことです.ここで言う健康障害とは,肥満関連疾患(耐糖能障害,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症・痛風,冠動脈疾患,脳梗塞,脂肪肝,月経異常および妊娠合併症,睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群,整形外科的疾患,肥満関連腎臓病)の11疾患です.日本人では,BMIが25を超えたあたりから,これらのうち,1つ以上の健康障害を有する場合が多いです.肥満は疾患ではありませんが,肥満症は疾患であり,医学的に治療が必要となります.呼吸機能検査においても,肥満による肺気量分画に大きな影響を及ぼします.

 肥満の種類には,内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満があります.前者は内臓の周りに脂肪が蓄積するもので,いわゆる“リンゴ型”と呼ばれています.後者は,下腹部,腰回り,おしりなどの皮下に脂肪が蓄積するもので,いわゆる“洋ナシ型”です.

参考文献

1)山田英人,田中都,菅波孝祥,他:肥満遺伝子産物レプチンの炎症誘起作用.The lung 17:17-18,67-71,2009
2)山口正雄:アレルギーをとりまく因子.Med Technol 39:1298-1299,2011
3)益田律子:加齢と喫煙が体位別肺機能検査に及ぼす影響について.臨麻 36:680-693,1987
4)Leblanc P, Ruff F, Milic-Emili J:Effects of age and body position on “airway closure” in man. J Appl Physiol 28:448-451,1970
5)Barlett HL, Buskirk ER:Body composition and the expiratory reserve volume in lean and obese men and women. Int J Obes 7:339-343,1983
6)秋葉裕二,中野均,長内忍,他:閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の肺機能と睡眠時呼吸異常について.日胸疾患会誌 33:1212-1218,1995

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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