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文献詳細

雑誌文献

臨床検査63巻12号

2019年12月発行

文献概要

検査説明Q&A・45

HBVマーカーを測定した際,抗原・対応する抗体が共存する症例はどのような状態なのでしょうか?

著者: 井上貴子1 田中靖人12

所属機関: 1名古屋市立大学病院中央臨床検査部 2名古屋市立大学大学院医学研究科病態医科学

ページ範囲:P.1476 - P.1480

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■はじめに

 生体に細菌やウイルスなどの病原微生物や異物(抗原)が侵入すると,抗原を攻撃して排除しようとする物質(抗体)が体内で作られる.B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)感染に関しては,ウイルスの本体であるHBV DNA検査に加えて,HBVマーカーと呼ばれるHBVの抗原および対応する抗体を血液検査によって調べ,症例の病態を判断する.

 HBVマーカーの臨床的意義について,表11)に示す.HBV感染者では,肝臓の細胞質内でHBs(hepatitis B surface)抗原,HBe(hepatitis B envelope)抗原が産生され,細胞外へ分泌される.コア抗原〔HBc(hepatitis B core)抗原〕も主に細胞質で産生され,一部は核内に移行しウイルス複製や病態形成にも関連するが,Dane粒子と呼ばれる感染粒子やp22crと呼ばれるHBV遺伝子をもたない空の粒子の構成成分(キャプシド)として細胞外へ分泌される.これらは,HBコア関連抗原(HB core-related antigen:HBcrAg)として検出可能である.

 B型急性肝炎の診断には,発症初期の血中HBs抗原・HBV DNAおよび免疫グロブリンM(immunoglobulin M:IgM)-HBc抗体高力価の証明が必要である.IgM-HBc抗体は,B型慢性肝炎の急性増悪時にも低力価上昇を示すことがある.B型慢性肝炎の診断には,HBs抗原陽性,HBc抗体高力価陽性,HBV DNA陽性が重要である.典型的な臨床経過でみられるHBVマーカーの挙動について,一過性感染時(図1)2),持続感染時(図2)2)に分けて示す.

 このようにHBVマーカーは,HBV感染の有無を調べるスクリーニング検査,HBV感染既往の確認,B型肝炎ワクチン(HBワクチン)接種効果の判定などに役立つ.一方で,抗原および対応する抗体が共存する症例もみられ,病態の判断に難渋することがある.

 本稿では,HBs抗原とHBs抗体の共存例,HBe抗原とHBe抗体の共存例について取り上げ,その原因を解説する.

参考文献

1)日本肝臓学会(編):慢性肝炎・肝硬変の診療ガイド2016,文光堂,2016
2)医療情報科学研究所(編):ウイルス性肝炎総論.病気がみえる vol.1 消化器 第5版,メディックメディア,pp270-271,2016
3)Wang S, Wang J, Fan MJ, et al:Identified OAS3 gene variants associated with coexistence of HBsAg and anti-HBs in chronic HBV infection. J Viral Hepat 25:904-910,2018
4)臨床微生物迅速診断研究会:HBs抗原・抗体検査の結果判断(http://www.jarmam.gr.jp/situmon2/hbs-hantei.html)(最終アクセス:2019年8月27日)
5)Liu Y, Zhang L, Zhou JY, et al:Clinical and Virological Characteristics of Chronic Hepatitis B Patients with Coexistence of HBsAg and Anti-HBs. PLoS One 11:e0146980,2016
6)Huang X, Qin Y, Zhang P, et al:PreS deletion mutations of hepatitis B virus in chronically infected patients with simultaneous seropositivity for hepatitis-B surface antigen and anti-HBS antibodies. J Med Virol 82:23-31,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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