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雑誌詳細

文献概要

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あとがき

著者: 河合昭人

所属機関:

ページ範囲:P.1076 - P.1076

 みなさんは“ブライトンの奇跡”という言葉をご存じだろうか? あるスポーツの歴史を大きく変えた4年前の戦いのことである.そう,それは英国時間2015年9月19日にイングランド南部ブライトンで行われたラグビーワールドカップ2015プールBの南アフリカ対日本戦で,日本が過去2度の優勝を誇る世界ランキング3位(当時)の南アフリカを34—32で破る大金星を挙げた試合のことだ.

 この試合,まず日本は10—12という2点のビハインドで前半を折り返した.後半も日本は南アフリカに食らいつき一進一退の攻防が続き,28分には五郎丸歩選手が自らトライ&ゴールを決めて,試合は29—29の同点となった.しかし,このままでは終われない南アフリカは32分,日本陣深くのペナルティーキック(PK)で攻めるのではなく,ペナルティーゴール(PG)を選択して29—32と勝ち越しに成功し,そのまま逃げ切れると考えたに違いない.その後,日本は試合終了直前に同じように訪れた敵陣深くのPKのチャンスで,PGではなくスクラムを選択.このとき,現場の空気は騒然とした.なぜなら,残り時間はほぼなく,PKを選択すれば99%の確率で同点となって試合終了を迎えることができるにもかかわらず,トライをすることで勝利を目指したのだ.これはトライできなければ負けてしまうことを意味する.南アフリカ戦であれば,同点で終了するだけでも偉大なことと皆が思ったかもしれない.そう,グラウンドの15人以外は…….ヘッドコーチのエディー・ジョーンズさえも頭を抱えていた映像を今でも覚えている.日本代表は試合開始前から,この試合の目標を勝つことに設定していたのだ.したがって日本代表は,その目的達成のために必然的な選択をしたにすぎない.そして,スクラムからトライを決め,勝利することができ“ブライトンの奇跡”と呼ばれるようになった.このとき,私はたまたま息子と試合を見ていた.それまでラグビーをテレビ観戦することなどなかった.失礼ながらあまり興味もなかった.しかし,試合が進むにつれ,気持ちが高揚していくのがわかった.スクラムを選択したときは,鳥肌が立ったのを覚えている.勝利の瞬間,息子とともに大喜びをしたものだ.今年,その興奮が日本で見られると思うと興奮がよみがえってくる.日本代表には,この4年間でさらに成長した姿を皆に見せてほしい.がんばれニッポン!

掲載雑誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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