icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床検査66巻1号

2022年01月発行

文献概要

今月の特集 食中毒の現状と微生物検査 〔寄生虫〕

クリプトスポリジウムなどによる食中毒

著者: 泉山信司1

所属機関: 1国立感染症研究所寄生動物部

ページ範囲:P.91 - P.97

文献購入ページに移動
Point

●消化管寄生性原虫による食中毒は,国内の報告数が少ない.一方,海外では工業先進国であっても報告が決して少なくないこと,輸入感染があること,重複感染もあり得ること,国内にも汚染源があることから注意を要する.

●原虫は糞口感染し,原因が生食だけとは限らない.非加熱の生水による感染経路があり,塩素消毒に抵抗性があるので,濾過除去などの必要性が指摘される.

●原虫感染に起因する下痢症(赤痢アメーバ症を除く)は非血性水様下痢を主症状とし,臨床所見からの区別は困難である.種々の検査活用によって正しく同定する.

●特に海外旅行者の下痢症や集団下痢症で通常の病原体が検出されない場合,免疫不全で持続する原因不明の下痢症などに検査が推奨される.

参考文献

1)Fayer R:General Biology. In: Cryptosporidium and Cryptosporidiosis, 2nd ed (Fayer R, Xiao L, eds), CRC press, Boca Raton, FL, pp1-42, 2008
2)感染研感染症疫学センター:クリプトスポリジウム症およびジアルジア症 2014年7月現在.IASR 35:185-200,2014
3)栁原克紀,賀来敬仁,鈴木広道,他:腸管感染症診療の現状についてのアンケート調査.感染症誌 95:117-121,2021
4)国立感染症研究所:発生動向調査年別報告数一覧(全数把握) IDWR2020年第52,53合併号に掲載している第53週のデータを含む(https://www.niid.go.jp/niid/ja/ydata/10068-report-ja2019-30.html)(最終アクセス:2021年6月25日)
5)厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課:4.食中毒統計資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/04.html)(最終アクセス:2021年6月25日)
6)厚生労働省医薬・生活衛生局食品監視安全課長:別表2 食中毒病因物質の分類,食中毒統計作成要領の改正について(薬生食監発0329第2号,平成31年3月29日)
7)泉山信司,八木田健司,永宗喜三郎:生水と原虫症(生水のリスク).公衆衛生 76:50-53,2012
8)Almeria S, Cinar HN, Dubey JP:Cyclospora cayetanensis and Cyclosporiasis: An Update. Microorganisms 7:317,2019
9)Centers for Disease Control and Prevention (CDC):Nationally Notifiable Infectious Diseases and Conditions, United States(https://wonder.cdc.gov/nndss/nndss_annual_tables_menu.asp)(最終アクセス:2021年8月18日)
10)Tack DM, Ray L, Griffin PM, et al:Preliminary Incidence and Trends of Infections with Pathogens Transmitted Commonly Through Food—Foodborne Diseases Active Surveillance Network, 10 U.S. Sites, 2016-2019. MMWR Morb Mortal Wkly Rep 69:509-514,2020
11)European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC):Cyclospora infections in European travellers to Mexico-21 July 2017, ECDC, Stockholm, 2017
12)阿部仁一郎,吉田永祥,鈴木淳,他:病原体検出マニュアル クリプトスポリジウム症・ジアルジア症等の原虫性下痢症(https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/CryptoGiardia_201709.pdf)(最終アクセス:2021年8月18日)
13)栁原克紀,森永芳智,岩永祐季,他:遺伝子検査の導入による新しい感染症診療.日化療会誌 66:729-737,2018
14)今野貴之,髙橋志保,小川小春,他:複数の病原体が検出された旅行者下痢症の検査について—秋田県.IASR 39:223-224,2018
15)熱帯病治療薬研究班:寄生虫症薬物治療の手引き—2020年8月改訂版,pp17-19,2020(https://www.nettai.org/)(最終アクセス:2021年7月2日)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?