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文献詳細

雑誌文献

臨床検査67巻10号

2023年10月発行

文献概要

増大号 肝疾患 臨床検査でどう迫る? 2章 急性の肝疾患

急な肝酵素上昇がみられた際の超音波検査の役割

著者: 小川眞広1

所属機関: 1日本大学医学部内科学系消化器肝臓内科学分野

ページ範囲:P.1078 - P.1084

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はじめに

 患者を診察する際,採血検査の結果で急な肝酵素上昇を認めた場合には,異常の程度(現在の重症度の判定)と原因を究明し治療の内容が決定される.肝臓の働きには糖,タンパク,脂質,金属,薬剤などの代謝や胆汁の産生などがあり,まずこれらになんらかの障害が起こった場合を想定する.しかし,筋肉の挫滅によるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase:AST)の上昇や,血液の溶血時のビリルビンの上昇などの例もあり,採血結果の異常が全て肝臓の機能障害ではないことも理解する必要がある.そのため,複数の検査項目により総合的に評価を行うことが日常診療では求められる.

 AST,アラニンアミノトランスフェラーゼ(alanine aminotransferase:ALT)に代表される逸脱酵素は肝細胞が破壊されることにより上昇し,γ-グルタミルトランスペプチダーゼ(γ-glutamyl transpeptidase:γGTP)やアルカリフォスファターゼ(alkaline phosphatase:ALP)に代表される胆道系酵素は胆汁のうっ滞により上昇する.また,プロトロンビン時間やアルブミン値などのタンパク合成能は肝予備能を反映している.これらとほぼ同時に原因検索としてのウイルス学的な検査や免疫学的検査,さらには腫瘍マーカーなどの検査項目を追加し評価する.これらの採血結果は初診時に全て出そろうわけではなく.また,一時点での評価ではなく複数の時点の経過観察によりその重症度が把握できる症例もある.

 この診療体系のなかでの画像診断の役割は原因の究明と重症度判定であるが,受診からなるべく早い時期に行うことで不必要な検査を省略し,早く正しい診断に到達することが可能となり,医療経済的にも有用であると考えられる.通常施行される画像診断として,超音波検査,CT検査,MRI検査が挙げられる.肝臓は人体最大の実質臓器であり他臓器も含めた1視野での全体像の評価などには,CT検査,MRI検査が有効であるが,外来で対象者を選別することなく触診と同様の感覚で簡便に施行できるという点が超音波検査の長所である.また,超音波検査は非侵襲的な検査法のため,経過観察や治療効果判定など複数回の検査が可能な点においても優れている.しかし,一方でCT検査,MRI検査などと比較すると客観性に乏しく,有効に使用されていないことも推測されるが,近年装置の改良により超音波検査の客観性も飛躍的に上昇している.そこで,本稿では急な肝酵素上昇がみられた際に超音波検査を活用法できるように,観察の意義と描出のポイントについて解説する.

参考文献

1)竹原靖明,他(編):日本医師会生涯教育シリーズ 腹部エコーのABC 第2版,日本医師会,2004
2)日本超音波医学会用語・診断基準委員会(編):脂肪肝の超音波診断基準,2021(https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/fatty_liver.pdf)(最終アクセス:2023年6月30日)
3)日本消化器がん検診学会超音波検診委員会腹部超音波検診判定マニュアルの改訂に関するワーキンググループ(編):腹部超音波検診判定マニュアル改訂版(2021年).日消がん検診誌 60:125-181,2022

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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