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増大号 肝疾患 臨床検査でどう迫る? 2章 急性の肝疾患
B型肝炎ウイルスの再活性化とモニタリング
著者: 奥村彰規1 伊藤清顕1
所属機関: 1愛知医科大学医学部内科学講座[肝胆膵内科]
ページ範囲:P.1090 - P.1093
文献購入ページに移動わが国においては,人口の約1%に当たる100万人程度がB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)のキャリアと推定されており1),HBV既往感染者〔HBs(hepatitis B surface)抗原陰性,かつHBc(hepatitis B core)抗体またはHBs抗体陽性〕は2割(2,600万人)程度存在するとされる.HBVキャリアでは“HBV DNAが10倍以上に上昇する”または“HBe(hepatitis B e)抗原が陽転化する”場合をHBV再活性化といい,既往感染者では“HBV DNAが検出感度以下より陽性化する”または“HBs抗原が陽転化する”場合をHBV再活性化という.特に,HBV既往感染者からの再活性化による肝炎はde novo B型肝炎と呼ばれる.HBV再活性化による肝炎は,B型急性肝炎に比べて急性肝不全になりやすく,また急性肝不全による死亡率が高いことも報告されている2).近年,化学療法や免疫抑制療法の進歩に伴ってこれらの治療法が多様化し使用機会も増加しているため,化学療法や免疫抑制療法が予定されている患者に対して,しっかりとガイドラインに従って対応をする必要がある.
HBV再活性化の問題に対して,世界では米国肝臓病学会(American Association for the Study of Liver Diseases:AASLD),欧州肝臓学会(European Association for the Study of the Liver:EASL),アジア太平洋肝臓学会(Asian Pacific Association for the Study of the Liver:APASL)がガイドラインを制定している.いずれも,基本的には化学療法や免疫抑制療法を行う場合,HBVキャリアには核酸アナログ製剤の投与を,既往感染者には血中のHBV DNAをモニタリングするように推奨されている.わが国における対応は,日本肝臓学会による「B型肝炎治療ガイドライン」3)に定められており,2022年6月の第4版への改訂によりHBV再活性化についても改訂が行われた.
本稿では,まずHBV再活性化を予防・判定するための関連マーカーについて触れ,その後HBV再活性化の機序と経過,化学療法・免疫抑制療法におけるスクリーニングおよびモニタリングについて解説する.
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