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今月の特集1 子宮頸がんをめぐって
子宮頸がん検診の現状と問題点—がん撲滅を目指した検診方法
著者: 岩成治1
所属機関: 1島根県立中央病院産婦人科
ページ範囲:P.196 - P.203
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●世界保健機関(WHO)は子宮頸がん撲滅の定義をがん罹患率4未満と定め,2030年までの介入目標値を①ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種率90%,②検診受診率70%,③前がん病変治療率90%とした.
●欧・米・豪の各国はすでに前がん病変有病率0.4%・がん罹患率6に減少して撲滅寸前であるが,わが国は前がん病変有病率2%・がん罹患率15で,いまだに増加し続けている.
●高罹患率の原因には,がん教育の遅れなどによる低若年受診率,検診登録・地域がん登録の不備による検診改善の遅れ,HPVワクチン接種の遅れ,HPV検査併用検診導入の遅れなどがある.
●検診受診率80%におけるがん罹患率減少効果:①細胞診単独検診はがん罹患率10まで減少可能,②HPV単独検診はがん罹患率8.4まで減少可能,③HPV・細胞診併用検診はがん罹患率5.2まで可能.実際,島根県出雲市のHPV併用検診において,若年受診率75%でがん罹患率は6に減少した.
●今後10年間はワクチン効果が望めないので,効率的で高精度のHPV併用検診を実施すべきである.ワクチン接種率70%以上・若年受診率70%以上の先進国のように前がん病変有病率が0.4%以下になれば,HPV単独検診,さらには自己採取HPV検診への移行が可能と思われる.
●世界保健機関(WHO)は子宮頸がん撲滅の定義をがん罹患率4未満と定め,2030年までの介入目標値を①ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種率90%,②検診受診率70%,③前がん病変治療率90%とした.
●欧・米・豪の各国はすでに前がん病変有病率0.4%・がん罹患率6に減少して撲滅寸前であるが,わが国は前がん病変有病率2%・がん罹患率15で,いまだに増加し続けている.
●高罹患率の原因には,がん教育の遅れなどによる低若年受診率,検診登録・地域がん登録の不備による検診改善の遅れ,HPVワクチン接種の遅れ,HPV検査併用検診導入の遅れなどがある.
●検診受診率80%におけるがん罹患率減少効果:①細胞診単独検診はがん罹患率10まで減少可能,②HPV単独検診はがん罹患率8.4まで減少可能,③HPV・細胞診併用検診はがん罹患率5.2まで可能.実際,島根県出雲市のHPV併用検診において,若年受診率75%でがん罹患率は6に減少した.
●今後10年間はワクチン効果が望めないので,効率的で高精度のHPV併用検診を実施すべきである.ワクチン接種率70%以上・若年受診率70%以上の先進国のように前がん病変有病率が0.4%以下になれば,HPV単独検診,さらには自己採取HPV検診への移行が可能と思われる.
参考文献
1)厚生労働省:がん検診 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490.html)(最終アクセス:2022年10月26日)
2)厚生労働省:職域におけるがん検診に関するマニュアル(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000200734.html)(最終アクセス:2022年10月26日)
3)Rodríguez AC, Schiffman M, Herrero R, et al:Longitudinal study of human papillomavirus persistence and cervical intraepithelial neoplasia grade 2/3: critical role of duration of infection. J Natl Cancer Inst 102:315-324,2010
4)Garland SM, Cuzick J, Domingo EJ, et al:Recommendations for cervical cancer prevention in Asia Pacific. Vaccine 12:M89-M98,2008
5)岩成治,河崎あさひ,宮本純子,他:細胞診・HPV検査併用子宮頸がん検診の浸潤がん予防効果 浸潤がんが島根県で半減,出雲市では概ね撲滅.島根医 33:148-152,2013
6)秀島未紗子,橋口真理子,横山正俊,他:HPV検査併用子宮がん検診における細胞診陽性/HPV陰性例の検討,第60回日本臨床細胞学会秋期大会(米子)抄録集,p541,2021
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10)公益社団法人日本産婦人科医会:第47回記者懇談会 2011年9月14日(https://www.jaog.or.jp/sep2012/know/kisyakon/47_110914.pdf)(最終アクセス:2022年10月7日)
11)日本産婦人科医会:第157回記者懇談会(R3.11.10)「精度の高い子宮頸がん検診に向けて—わが国の現状を踏まえたHPV検査導入法—」(https://www.jaog.or.jp/about/conference/157_20211110/)(最終アクセス:2022年10月26日)
12)今野良:細胞診とHPV-DNA検査の感度と特異度比較(CIN2以上).化療の領域 27:323-334,2010
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14)Malagón T, Kulasingam S, Mayrand MH, et al:Age at last screening and remaining lifetime risk of cervical cancer in older, unvaccinated, HPV-negative women: a modelling study. Lancet Oncol 19:1569-1578,2018
15)伊藤真理:子宮頸がん検診における自己採取HPV検査の有効性検証(自己採取HPV検査臨床応用研究事業).アニュアル・レポート2017,公益財団法人未来工学研究所,pp82-85,2017
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