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今月の特集2 臨床検査で患者を救え!—知っておいてほしい疾患
アナフィラキシーと心室細動
著者: 後藤慶大1 笠間周2
所属機関: 1ドレスデン心臓センター 2奈良県立医科大学附属病院臨床研究センター
ページ範囲:P.254 - P.258
文献購入ページに移動アナフィラキシーとは,アレルゲンなどの侵入によって複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され,生命に危機を与えうる過敏反応をいう1).アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックという.肥満細胞や好塩基球の免疫グロブリンE(immunoglobulin E:IgE)と抗原が原因となり,ロイコトリエンやヒスタミンを放出し,平滑筋の収縮および血漿漏出を伴う血管拡張を誘発する.アナフィラキシーの多くはIgEが関与して発生し,最も多くみられる誘因には食物,ハチやアリなどの昆虫の毒,薬剤などが挙げられる.薬剤によるアナフィラキシーには,IgEが関与しない免疫学的機序によるアナフィラキシーと,肥満細胞を直接活性化する機序によるアナフィラキシーが存在する.CTで用いられる造影剤は,IgEが関与する機序による場合と関与しない機序の場合の両者によってアナフィラキシーの誘因となりうる.アナフィラキシーでは気管支収縮・気管支喘息,嘔吐・下痢,蕁麻疹,血管性浮腫など多種多様な症状が引き起こされる.重度のアナフィラキシーでは感作抗原の曝露の数分後にショックや痙攣が起こって死亡することがある.感作抗原の曝露後4〜8時間で発生する遅発性のアナフィラキシーも存在する.蕁麻疹などの軽度の場合や,重度または致死的となる場合もあり,症状や経過は急性のアナフィラキシーと同様にさまざまである.
アナフィラキシーに似ているものとして,アナフィラキシー様反応がある.アナフィラキシー様反応はアナフィラキシーと臨床的に判別が難しいが,アナフィラキシー様反応ではIgEが関与しておらず,先述した先行する抗原の感作が不要である.つまり,抗原に初めて曝露されたときにアナフィラキシー様反応が起きることがある.アナフィラキシー様反応は,肥満細胞や補体を活性化する免疫複合体を介して発生することが一般的である.アナフィラキシー様反応の最も一般的な誘因にヨード造影剤やアスピリンおよびその他の非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal antiinflammatory drugs:NSAIDs),オピオイド,モノクローナル抗体などが挙げられる.
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