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医療紛争の事例から学ぶ・1【新連載】
採血
著者: 蒔田覚1
所属機関: 1蒔田法律事務所
ページ範囲:P.794 - P.796
文献購入ページに移動はじめに
令和3(2021)年5月の「臨床検査技師等に関する法律」の改正によって臨床検査技師の業務範囲が拡大された.
現在,臨床検査技師は,“診療の補助”として①採血を行うこと,②検体採取を行うこと,③厚生労働省令で定める生理学的検査を行うこと,④これらに関連する行為として厚生労働省令で定めるものを行うことができる.
かつて臨床検査技師業務の中心であった“検体検査”と異なり,上記の行為は患者の身体への侵襲を伴う医行為(保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為)である.医師の働き方改革を実現するためのタスク・シフト/シェアの下で,臨床検査技師には,“検体検査”業務だけでなく,“診療の補助”業務についてもいっそうの活躍が期待されている.その結果,患者やその家族と接触する機会は格段に増えることが予想される.
“温故知新”,つまりこれまでの医療紛争事例を学ぶことは,今後の臨床検査技師の業務を行ううえでの羅針盤になるであろう.臨床検査技師は医療機関や衛生検査所など(以下,医療機関等)に雇用されており,訴訟当事者(被告)となるのは,臨床検査技師を雇用する医療機関等であることが多い.もっとも,不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求の第一義的責任は臨床検査技師にあり,採血による神経損傷事例に関し,過去には医療機関と連帯して臨床検査技師に3,800万円を超える損害賠償を認めた裁判例も存在する(福岡地方裁判所小倉支部平成14年7月9日判決1)).
連載企画の第1回となる本稿では,臨床検査技師による採血行為が問題となった近年の裁判例〔(原審)東京地方裁判所平成28年1月13日判決2)/(控訴審)東京高等裁判所平成28年6月21日判決3)〕を紹介する(請求額約1,800万円/請求棄却・控訴棄却).
令和3(2021)年5月の「臨床検査技師等に関する法律」の改正によって臨床検査技師の業務範囲が拡大された.
現在,臨床検査技師は,“診療の補助”として①採血を行うこと,②検体採取を行うこと,③厚生労働省令で定める生理学的検査を行うこと,④これらに関連する行為として厚生労働省令で定めるものを行うことができる.
かつて臨床検査技師業務の中心であった“検体検査”と異なり,上記の行為は患者の身体への侵襲を伴う医行為(保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為)である.医師の働き方改革を実現するためのタスク・シフト/シェアの下で,臨床検査技師には,“検体検査”業務だけでなく,“診療の補助”業務についてもいっそうの活躍が期待されている.その結果,患者やその家族と接触する機会は格段に増えることが予想される.
“温故知新”,つまりこれまでの医療紛争事例を学ぶことは,今後の臨床検査技師の業務を行ううえでの羅針盤になるであろう.臨床検査技師は医療機関や衛生検査所など(以下,医療機関等)に雇用されており,訴訟当事者(被告)となるのは,臨床検査技師を雇用する医療機関等であることが多い.もっとも,不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償請求の第一義的責任は臨床検査技師にあり,採血による神経損傷事例に関し,過去には医療機関と連帯して臨床検査技師に3,800万円を超える損害賠償を認めた裁判例も存在する(福岡地方裁判所小倉支部平成14年7月9日判決1)).
連載企画の第1回となる本稿では,臨床検査技師による採血行為が問題となった近年の裁判例〔(原審)東京地方裁判所平成28年1月13日判決2)/(控訴審)東京高等裁判所平成28年6月21日判決3)〕を紹介する(請求額約1,800万円/請求棄却・控訴棄却).
参考文献
1)福岡地方裁判所小倉支部平成14年7月9日判決(裁判所ウェブサイト掲載判例)
2)東京地方裁判所平成28年1月13日判決
3)東京高等裁判所平成28年6月21日判決
4)東京地方裁判所平成26年10月30日判決
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