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医療紛争の事例から学ぶ・3
検体の取り違え
著者: 松本龍馬1 蒔田覚2
所属機関: 1岡部真勝法律事務所 2蒔田法律事務所
ページ範囲:P.996 - P.998
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検体検査自体は患者の身体への侵襲を伴う医行為ではないが,検体検査の結果を踏まえて治療方針が決定されることから,検体検査は治療方針が正しく決定されるための重要な前提条件である.また,検体を取り違えないことは検体検査を業とする臨床検査技師の初歩的,基本的な注意義務である.そのため,検査の過程において検体の取り違えがあった場合には,過失(注意義務違反)が認められる可能性が高い.なお,現在では,臨床検査技師の業務範囲として,本来的業務である検査業務に加え,採血や微生物学的検査目的の検体採取などが加わったことから,臨床検査技師は,検査部門の専門職として検体採取,検体検査,判定,報告という一連の過程について責任を負うことになる.
もっとも,過失が認められたとしても,悪しき結果がない場合,あるいは過失と悪しき結果の発生との間に因果関係が存在しない場合には,法律上の損害賠償責任は発生しない.そこで,法的責任の構造について解説すべく,連載第3回では,検体の取り違え事案において,悪しき結果の内容や因果関係の有無が争われた裁判例〔山形地裁令和2年2月4日判決1)(請求額約1,500万円:認容額220万円[うち弁護士費用20万円])〕を紹介する.
検体検査自体は患者の身体への侵襲を伴う医行為ではないが,検体検査の結果を踏まえて治療方針が決定されることから,検体検査は治療方針が正しく決定されるための重要な前提条件である.また,検体を取り違えないことは検体検査を業とする臨床検査技師の初歩的,基本的な注意義務である.そのため,検査の過程において検体の取り違えがあった場合には,過失(注意義務違反)が認められる可能性が高い.なお,現在では,臨床検査技師の業務範囲として,本来的業務である検査業務に加え,採血や微生物学的検査目的の検体採取などが加わったことから,臨床検査技師は,検査部門の専門職として検体採取,検体検査,判定,報告という一連の過程について責任を負うことになる.
もっとも,過失が認められたとしても,悪しき結果がない場合,あるいは過失と悪しき結果の発生との間に因果関係が存在しない場合には,法律上の損害賠償責任は発生しない.そこで,法的責任の構造について解説すべく,連載第3回では,検体の取り違え事案において,悪しき結果の内容や因果関係の有無が争われた裁判例〔山形地裁令和2年2月4日判決1)(請求額約1,500万円:認容額220万円[うち弁護士費用20万円])〕を紹介する.
参考文献
1)山形地方裁判所令和2年2月4日判決
2)最高裁判所平成13年11月27日判決
3)大阪高等裁判所平成14年9月26日判決
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