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文献詳細

雑誌文献

臨床検査68巻10号

2024年10月発行

文献概要

増大号 心電図判読のスタンダード 基本を極めて臨床で活かす! 2章 波形に注目—読み解くポイント

T波,U波

著者: 有田卓人1

所属機関: 1心臓血管研究所付属病院循環器内科

ページ範囲:P.1195 - P.1199

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はじめに

 T波は心室の再分極を表す波であり,QRS波の幅が正常で狭い場合,T波はQRS波と同じ向きである.そのため,T波は一般的にQRSの主軸と同方向を向く場合を正常と考え,正常心電図にも陰性T波が存在し,成人では肢誘導のうちaVR誘導で陰性,胸部誘導ではV1およびV2誘導で陰性T波を認めることがある.心筋虚血による心内膜側の活動電位の持続時間が短縮する場合や心肥大(酸素消費が大きくなるため相対的酸素不足となる)の場合に陰性T波が観察される.T波の高さに関しては,正常ではQRSの1/10(あるいは1/5とする説もある)以上と考えられている.

 U波はT波の後に続く小さな振れであり,その成因はいまだに不明とされるが,Purkinje細胞の再分極を表す可能性や,心室壁にあるM細胞の活動電位持続時間を表す可能性などが示唆されている.通常はV2〜V5誘導で認めることが多く,正常のU波はT波と同じ極性を示し,その高さはT波の高さの10%程度とされている(図1).臨床的にはV4〜V6で観察される陰性U波は,冠動脈左前下行枝の重症虚血を反映することが有名である.

参考文献

●山下武志(編):心研印 心電図判読ドリル,医学書院,2022
●香坂俊:もしも心電図で循環器を語るなら 第2版,医学書院,2021

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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