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文献詳細

雑誌文献

臨床検査68巻3号

2024年03月発行

文献概要

今月の!検査室への質問に答えます・13

直接抗グロブリン試験陽性の自己免疫性溶血性貧血患者を中心に輸血前検査について教えてください

著者: 岸野光司1

所属機関: 1自治医科大学附属病院輸血・細胞移植部

ページ範囲:P.312 - P.315

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はじめに

 自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anemia:AIHA)1)は,自己の赤血球膜抗原に対する自己抗体が産生されることにより,赤血球が溶血(破壊)されて生じる貧血である.自己抗体の産生につながる病因の詳細はいまだ不明な部分が多い.また,自己抗体が赤血球と反応する至適温度により,温式AIHA(体温37℃付近の場合)と冷式AIHA(低温の4℃で最大活性を示す場合)に大別される.さらに冷式AIHAの病型には,寒冷凝集素症(cold agglutinin disease:CAD)と発作性寒冷ヘモグロビン尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria:PCH)の2病型がある.AIHAの90%以上は温式AIHAである1)

 AIHAの診断基準1)には,直接抗グロブリン試験(direct antiglobulin test:DAT)が陽性になることが重要な検査所見の1つとなっている.DATは,生体内ですでに赤血球膜に結合している免疫グロブリン(immunoglobulin:Ig)Gまたは補体成分を検出する方法である.DAT陽性者の輸血検査では,血漿(血清)中の抗赤血球自己抗体や赤血球に結合している自己抗体により,血液型検査,不規則抗体検査,交差適合試験に影響を及ぼすことがある.

 本稿では,DAT陽性のAIHA患者の輸血前検査について,検査試薬も含めて解説していきたい.

参考文献

1)厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業特発性造血障害に関する調査研究班自己免疫性溶血性貧血の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ:自己免疫性溶血性貧血診療の参照ガイド 令和4年度改訂版,2023(http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Autoimmune_hemolytic_anemia.pdf)(最終アクセス:2023年11月10日)
2)Petz LD, Garratty G:Immune hemolytic anemias, 2nd ed, Churchill Livingstone, New York, 2004
3)岸野光司:直接抗グロブリン試験陽性患者の輸血検査と輸血について.Med Technol 47:179-184,2019
4)Petz LD:A physician's guide to transfusion in autoimmune haemolytic anaemia. Br J Haematol 124:712-716,2004
5)岸野光司:第5.3 抗体解離試験.輸血・移植検査技術教本(日本臨床衛生検査技師会監),丸善出版,pp80-91,2016
6)Ellisor SS, Papenfus L, Sugasawara E, et al:Dichloromethane (DCM) elution procedure. Transfusion 22:409,1982
7)Byrne PC:Use of a modified acid/EDTA elution technique. Immunohematology 7:46-47,1991
8)Ness PM:How do I encourage clinicians to transfuse mismatched blood to patients with autoimmune hemolytic anemia in urgent situations?. Transfusion 46:1859-1862,2006
9)奥田誠,池本純子,石丸健,他:赤血球型検査(赤血球系検査)ガイドライン(改訂4版).日輸血細胞治療会誌 68:539-556,2022
10)Sokol RJ, Hewitt S, Booker DJ, et al:Patients with red cell autoantibodies: selection of blood for transfusion. Clin Lab Haematol 10:257-264,1988
11)Park SH, Choe WH, Kwon SW:Red Blood Cell Transfusion in Patients With Autoantibodies: Is It Effective and Safe Without Increasing Hemolysis Risk?. Ann Lab Med 35:436-444,2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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