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文献詳細

雑誌文献

臨床検査68巻8号

2024年08月発行

文献概要

今月の!検査室への質問に答えます・17

新生児聴覚スクリーニングは,なぜ新生児期に検査を実施する必要があるのですか?

著者: 任智美1

所属機関: 1兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科

ページ範囲:P.1014 - P.1016

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はじめに

 新生児聴覚スクリーニング(newborn hearing screening:NHS)とは,聴覚障害の早期発見・早期療育を図るために,新生児に対して実施する検査です.先天性難聴の頻度は約1/1,000と多く,遺伝的要因が約60%に関与しています.言語獲得には臨界期があるため,先天性難聴児において最も重要な課題は言語習得であり,それには早期発見と早期介入が不可欠なのです.2000年にJCIH(Joint Committee on Infant Hearing)より,“全ての新生児に聴力スクリーニングを,生後3カ月までに聴力学的評価と医学的評価,難聴が確認された乳幼児は,生後6カ月までに,乳幼児の難聴や聴覚障害に精通した医療や教育の専門家による介入を受ける「1-3-6ルール」に従うこと”が提言されました1).世界保健機関(World Health Organization:WHO)が,新生児期・小児期・成人期・老年期といったライフサイクル別の難聴への取り組みを強化したことに呼応して,わが国でも,難聴者が誰ひとり取り残されず,生き生きとこころ豊かに暮らすことのできる社会の実現に向けて難聴対策推進議員連盟が提言した“Japan Hearing Vision”をまとめ,これに沿って,2020年より政府の取り組みが進んでいます.この“Japan Hearing Vision”では,政策の柱の1つとして“全ての新生児に対して新生児聴覚検査の実施と全額公費負担を実現することにより,全ての新生児が新生児聴覚検査を受けられる体制を構築すること”,また中等度以上の難聴では言語獲得に影響があることから,“新生児期,小児期の難聴児支援として難聴を早期に発見し,医療・療育・教育を適切な時期に提供することで言語能力を獲得できること”を掲げています2)

参考文献

1)Joint Committee on Infant Hearing, American Academy of Audiology, American Academy of Pediatrics, et al:Year 2000 position statement: principles and guidelines for early hearing detection and intervention programs. Joint Committee on Infant Hearing, American Academy of Audiology, American Academy of Pediatrics, American Speech-Language-Hearing Association, and Directors of Speech and Hearing Programs in State Health and Welfare Agencies. Pediatrics 106:798-817,2000
2)中川尚志:難聴対策推進議員連盟とJapan Hearing Vision.JOHNS 38:127-129,2022
3)厚生労働省:令和2年度および令和3年度「新生児聴覚検査の実施状況等について」,2023(https://www.mhlw.go.jp/content/11925000/001231811.pdf)(最終アクセス:2024年3月29日)
4)Doyle KJ, Burggraaff B, Fujikawa S, et al:Neonatal hearing screening with otoscopy, auditory brain stem response, and otoacoustic emissions. Otolaryngol Head Neck Surg 116(6 Pt 1):597-603,1997
5)任智美,矢崎牧,奥中美恵子,他:多職種の相互理解と意識改革 家族との連携を中心とした未就学難聴児言語療育 医師の立場から.小児耳鼻 44:11-16,2023
6)American Academy of Pediatrics, Joint Committee on Infant Hearing:Year 2007 position statement: Principles and guidelines for early hearing detection and intervention programs. Pediatrics 120:898-921,2007
7)飯野ゆき子:ダウン症と耳鼻咽喉科疾患.日耳鼻会報 123:81-83,2020
8)任智美,奥中美恵子,北條和歌,他:小児ダウン症児の側頭骨CTにおける内耳形態計測と聴力評価.小児耳鼻 37:20-28,2016
9)片岡祐子:軽度・中等度難聴だからこそ気を付けること 幼児・学童.日耳鼻頭頸部外会報 126:1185-1190,2023

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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