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文献詳細

雑誌文献

臨床検査7巻8号

1963年08月発行

文献概要

技術解説

妊娠の血清学的診断法

著者: 臼井美津子1

所属機関: 1東大医学部血清学教室

ページ範囲:P.559 - P.563

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はじめに
 妊娠の有無をできるだけ早期に診断することは医学的および社会的見地からも重要視されている。つまり,妊娠の有無によって,ある種の治療を中止すべきかどうかを決定しなければならぬ場合もあるし,また免疫注射とか,放射線治療なども妊娠の有無によって大きく左右される問題である。さらに習慣性流産などの婦人には,妊娠をできるだけ早期に確認して適確な治療をほどこす必要があり,あるいはまた,子宮外妊娠とか,流産の危険のある症例とか,胎児死亡による流産などの診断にも,妊娠を適確に知る方法が要求される。
 従来からいくつかの方法が知られているが,大きくわけて,生物学的方法,化学的方法,臨床的方法および血清学的方法の4つにわけられる。このうち,従来からもっとも多く行なわれていたのは生物学的方法で,1927年にAschheim & Zondekの発表したマウスを用いる方法がその最初のものである。ついで1930年のウサギを用いるFriedmanの方法,最近になってXenopus Laevisというカエルを用いる方法が行なわれるようになった。いずれもその原理は,婦人が受胎すると,絨毛性ゴナドトロピン(Human Chorionic Gonadotrophin略してHCG)というホルモンが尿中および血清中に排出されはじめ,8〜10週間で最大値に達し,その後は減少し,分娩後3〜4日で消失するという事実から,尿中にこのHCGホルモンを証明することによって妊娠を知ろうというわけである。尿中にHCGを検出するために上記いろいろの動物を用いるもので,検査尿を動物に適当に注射すると,尿中にHCGが含まれているならば,このホルモンの刺激によって動物に特有の変化があらわれるから,それによって妊娠の有無を知ることができる。妊娠時以外にこのHCGホルモンがあらわれるのは,ある種の腫瘍(絨毛上皮腫),胞状奇胎などのときだけだそうで,尿中にHCGホルモンを証明することができれば,妊娠と診断してもかなり高い的中率を示すものである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1367

印刷版ISSN:0485-1420

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