治療のポイント
・呼吸不全,ショックの有無など緊急度を評価し,すみやかに初期対応を行う.
・原因病変の診断には現病歴,併存症,既往歴,薬剤服用歴の収集とともに,画像検査,気管支鏡検査を適宜実施する.
◆病態と診断
A病態
・喀血とは,下気道・肺からの出血と定義される.
・大量喀血による死亡の主因は,気道閉塞,または肺胞換気障害による呼吸不全であり,気道確保などの迅速な初期対応が必要である.
・基礎疾患・年齢などにより呼吸・循環の予備能が低い患者では,より少量の喀血で悪化する可能性があり注意する.
B診断
・原因疾患は,気管支拡張症,肺結核,肺非結核性抗酸菌症,気管支炎,肺炎,悪性腫瘍,外傷などによる気道損傷,自己免疫疾患,肺血管病変,心疾患など多岐にわたる.
・すみやかに呼吸・循環などのバイタルサインにより緊急度を評価する.
・原因の診断においては,現病歴,併存症,既往歴,抗凝固薬,抗血小板薬などの薬剤服用歴の情報収集に努める.
・血算,凝固検査により出血素因の有無を把握する.
・初期対応を優先しつつ,出血側・部位の同定,および原因検索のため,画像検査(胸部X線,CT,CTアンギオグラフィ),気管支鏡検査を適宜実施する.
◆治療方針
診療にあたっては標準的予防策を実施するとともに,肺結核が否定できない状況ではN95マスク着用などの空気感染対策を追加する.緊急度を評価し,輸液路確保,呼吸管理などの初期対応を行い,病変の診断と必要に応じて止血処置を実施する.
A初期対応
原則絶対安静とし,バイタルサインをモニタリングしながら末梢静脈路の確保と輸液,酸素投与を開始する.出血側の推定が画像検査などで可能な場合は患側を下にする側臥位とする.酸素投与により呼吸不全が改善しない場合は気管挿管,人工呼吸を開始する.出血が顕著な場合,片側肺からの出血の場合は健側への片側挿管により健側肺を保護する.通常の人工呼吸療法にて改