今日の診療
治療指針

消化管穿孔
gastrointestinal perforation
江口 晋
(長崎大学大学院教授・移植・消化器外科学)

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治療のポイント

・容易に敗血症に至る場合があるため,緊急の処置を要する.

・emergency surgery(緊急手術)を行いsurgical critical care(外科的集中治療)につなげる,acute care surgery分野の疾患である.

・基本的に外科的治療の適応であるが,なかには保存的加療を選択できる場合もある.保存的加療を選択した場合も厳密な観察が必要であり,いつでも外科手術に移行できる体制が必要である.

・近年,腹腔鏡下での手術が増加してきている.

◆病態と診断

A病態

・食道から直腸に至る消化管に穿孔をきたした状態である.原因として,悪性腫瘍,虚血,内圧上昇,医原性,異物,外傷などを鑑別する必要がある.

1.食道穿孔

・特発性食道破裂(Boerhaave症候群)は嘔吐を契機に食道が破裂する病態であり,縦隔や胸腔内を高度に汚染する可能性が高い.頻度としては医原性が最も多いが,前処置を行ったうえで処置を行うことが多く,その場合汚染の程度は軽度である.

2.胃・十二指腸穿孔

・潰瘍を原因とすることが多いが,悪性腫瘍の鑑別を忘れてはならない.

3.小腸穿孔

・解剖学的位置の問題もあり,特徴的な所見に乏しいが,原因は通過障害による圧上昇によることが多い.全人口の1~2%に存在するといわれるメッケル憩室を原因とすることもある.

4.大腸穿孔

・憩室穿孔,もしくは大腸癌を原因とすることが多い.便による腹腔内汚染が起こり,容易に敗血症に移行する.

B診断

・単純X線で発見される場合もあるが,CT検査がgold standardである.腹腔内〔食道であれば縦隔,下部直腸(Rb)であれば後腹膜〕にairを同定することで診断される.

◆治療方針

A食道穿孔

 穿孔部の閉鎖と,縦隔炎,膿胸回避のためのドレナージが必要となる.穿孔部が小さく,胸腔へ穿破していない場合,食道へのドレナージが良好な場合

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