A原理
下行大動脈に挿入された30~40mL,長さ約200mmのバルーンとヘリウムガスを用い心拍に同期(心電図または直接大動脈圧)させて,大動脈弁開放と同時にバルーンを収縮,大動脈弁閉鎖と同時にバルーンを拡張させる.これによる収縮期後負荷軽減と拡張期血圧上昇による冠血流増加が循環補助の原理である.後負荷軽減は心筋酸素消費量の減少につながり,拡張期の血圧上昇は冠循環改善と平均血圧上昇による組織灌流改善効果ももたらされる.バルーンサイズは患者の体格(主に身長)を基準に選択される.
B適応
適応として①急性心筋梗塞における再灌流前後の補助(再灌流時に心筋末梢灌流が十分でない場合など),②心室中隔穿孔や急性乳頭筋断裂などの機械的合併症の手術前の補助,③静注強心薬を用いても血行動態や末梢循環不全が改善しない場合が挙げられる.急性心筋梗塞のショック患者をランダム化して生命予後を比較したIABP-SHOCK Ⅱ試験ではIABPの生命予後改善効果は認められなかったため,ショックを伴う急性心筋梗塞へのルーチンでの使用は推奨されていない.機器の発達により,頻拍や心房細動などがあってもかなり追従して補助できるようになっているものの,頻脈や不整脈が頻発する場合はその効果は減弱する.流量補助ではないため,心臓発生圧が著しく低い場合や心停止時には効果がない.
C禁忌
絶対的禁忌として①重症大動脈弁閉鎖不全,②大動脈解離,③胸腹部の大動脈瘤,高度狭窄が挙げられる.相対的禁忌であるが,①大動脈の蛇行が激しくバルーンが拡張できない場合,②下肢の閉塞性動脈硬化症や総腸骨動脈の狭窄が挙げられる.凝固異常や敗血症など,血管内にカテーテルを留置する場合に一般的に考慮すべき病態についても確認が必要である.
D手技のポイント
カテーテルの太さは6~8Fで,大腿動脈からの穿刺で容易に挿入可能である.できる限り超音波ガイド下での