治療のポイント
・外傷手術に際しては,予定手術(癌手術など)や緊急手術(急性腹症など)とは異なる「外傷外科の特殊性」を認識する必要がある.
・外傷外科におけるDCSの特徴は,損傷臓器の解剖学的な修復や再建を最初に行うのではなく,まずは呼吸・循環動態の安定化をはかる手術(蘇生的手術,abbreviated surgery)を行うことである.
・DCSは,以下の3つのステップで構成される.①止血と(腸内容などの)汚染回避を目的とした蘇生的手術(abbreviated surgery),②open abdomen状態での集中治療,③損傷臓器の修復・再建と閉腹を目的とした計画的再手術(planned reoperation)である.
・近年では,DCSに並行してdamage control resuscitation(permissive hypotension,hemostatic resuscitationなど)を包括的に行うdamage control strategyが重要とされる.
A病態と適応
・外傷性ショックの原因のほとんどは出血性ショックによるものであり,受傷早期の死亡原因は失血死である.
・大量出血による出血性ショック状態は,外傷死の3徴(アシドーシス,低体温,凝固障害)に陥る危険があり,3徴を呈するといかに卓越した外科医でもあらゆる組織断端から出血し続け止血が困難になる.よって,3徴のうち1つ以上を認める場合,もしくは陥ることが高率に予想される場合,DCSの適応となる.
B手技
・出血性ショックとなりうる体幹部外傷(胸部,腹部,骨盤領域)や頸部外傷(特に血管損傷)へのDCSの基本的アプローチは同じであるが,本項では比較的手術頻度の高い腹部臓器損傷を中心に解説する.
1.abbreviated surgery
a.準備と開始
1)1分1秒も無駄にせずにすみやかに開始する.
2)通常のタイム