今日の診療
治療指針

グリホサート・グルホシネート中毒
glyphosate and glufosinate poisoning
田口 大
(北海道勤労者医療協会勤医協中央病院・救急科科長)

頻度 あまりみない

Ⅰ.グリホサート中毒

治療のポイント

・最低12時間経過観察する.

・グリホサート・カリウム塩の内服による高K血症発症時には,血液透析を検討する.

・界面活性剤による中毒症状出現時には,気管挿管による人工呼吸管理を検討する.

◆病態と診断

A病態

・主成分はグリホサート塩と界面活性剤で,グリホサート・カリウム塩は高濃度のKを含有し,高K血症が生じる.

・グリホサートは蛋白結合率が低く,分布容積が小さいため,ほとんどは未変化体のまますみやかに尿中に排泄される.消化管粘膜の腐食作用,腎障害をきたす.

・界面活性剤は,消化管粘膜の腐食作用肺障害,血管透過性低下,心筋抑制をきたす.

B診断

・本人の証言や消化器症状,もしくは現場からの容器の持参が診断の一助となる.

・確定診断は,薄層クロマトグラフィによる尿の定性分析や高速液体クロマトグラフィによる定量分析により行う.

◆治療方針

 軽症でも呼吸・循環をモニターし12時間は経過観察する.胃洗浄は行わない.

 喉頭浮腫や呼吸不全をきたした場合は気管挿管・人工呼吸管理を行う.高K血症,代謝性アシドーシス,急性腎不全併発では血液浄化療法を行う.

Ⅱ.グルホシネート中毒

治療のポイント

・グルホシネート中毒では,遅発性の中枢神経症状(けいれん発作,昏睡,呼吸停止)に注意し,最低48時間経過観察する.

・服用量の確認および血中濃度測定とノモグラムが重症化予測に有用である.

◆病態と診断

A病態

・主成分はグルホシネートアンモニウム塩もしくはグルホシネートPナトリウム塩と界面活性剤.

・グルホシネートは消化管よりすみやかに吸収され血中濃度は服用1時間内にピークとなる.

・蛋白結合率は1%未満で,その95%が服用24時間以内に尿中に排泄される.

・早期症状は,界面活性剤による消化管粘膜の腐食による腹部症状で,遅発症状は,グルホシネートによる中枢神経毒性と界面活性剤による血管透

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