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ニュートピックス
・胸腺癌では,切除可能であれば胸腺胸腺癌切除術および上縦隔リンパ節郭清を行う.完全切除が不能な場合については,生検で組織診断を付けたのちのレンバチニブの有用性が認められ,本邦で切除不能な胸腺癌に保険適用された.
治療のポイント
・腫瘍径が小さい場合では無症状のことが多く,約半数は胸部X線やCT検査で偶然発見される.
・上縦隔では甲状腺腫,前縦隔では,胸腺腫・胚細胞性腫瘍,中縦隔では悪性リンパ腫・嚢胞,後縦隔では神経原性腫瘍が多い.
・良性腫瘍では一般的に手術が行われることが多く,悪性の場合には手術・放射線治療・抗癌剤治療のいずれかを行う.
・嚢胞以外の縦隔腫瘍では,疑いの段階で専門医に診療を依頼する.
・胸腺腫は緩徐な進行を呈するが,「肺癌診療ガイドライン」に沿って悪性に準じた診療を行う.
・胚細胞腫瘍のうち,セミノーマ以外ではまず化学療法を行い,血中腫瘍マーカーが正常化した場合は手術を行う.
◆病態と診断
A病態
・縦隔腫瘍(嚢胞を含む)で手術を受けた症例をまとめた報告によると,最も多かったものは胸腺腫で,縦隔腫瘍の全体の約40%を占めている.次に嚢胞(15%),神経原性腫瘍(13%)となっている.悪性度の高い腫瘍では,胚細胞性腫瘍が全体の約8%,胸腺癌と悪性リンパ腫がともに約5%であった.
B診断
・画像診断では造影CT,造影MRIが有用である.PET-CTの有用性に関しては,明らかではない.
・血清学的腫瘍マーカーとしては,胸腺腫,神経原性腫瘍,嚢胞に関して有用なものはない.
・胸腺腫の約20~30%に重症筋無力症を合併している.この場合には,抗アセチルコリン受容体抗体値が上昇している.また,約5%に赤芽球癆,低ガンマグロブリン血症(Good症候群:本邦では0.2~0.3%)を合併していることがある.
・胚細胞腫瘍は,セミノーマでは泌尿器科的に睾丸の精査も必要となる.