◆病態と診断
A虚血性心疾患
従来,安定冠動脈疾患とよばれていた疾患群は,急性冠症候群(ACS:acute coronary syndrome)に対して慢性冠症候群(CCS:chronic coronary syndrome)と称することが一般化されてきた.また,ACSのなかでも急性心筋梗塞においては,高感度トロポニンレベルが健常人の99%値を超える一過性の上昇・下降を示すことを診断基準に用いることが広く普及した.さらに,冠動脈閉塞を伴わない心筋梗塞(MINOCA:myocardial infarction with non-obstructive coronary arteries)(→キーワード2023)図は,閉塞性冠動脈疾患を有する心筋梗塞(MI-CAD:myocardial infarction with obstructive coronary artery disease)とは異なり,冠攣縮や微小循環障害などが関与する独立した疾患概念として認識されるようになった.
近年,パンデミックとなっているCOVID-19感染症の患者においては,血栓症による虚血イベントと同時に出血イベントの増加が生じており,その背景には,炎症の惹起による血管傷害の関与が考えられ,心血管疾患と全身性炎症反応の関連が改めて認識されている.
B心不全
左室駆出率(LVEF:left ventricular ejection fraction)の低下した心不全(HFrEF:heart failure with reduced ejection fraction)は,LVEF40%未満とされてきたが,近年のアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI:angiotensin receptor neprilysin inhibitor)やナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT:sodium/gl