Ⅰ.胃ポリープ
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治療のポイント
・出血,通過障害,あるいは癌の合併を認める場合は治療を検討する.
◆病態と診断
胃ポリープは胃内腔に突出した限局性の粘膜隆起を意味し,一般的には良性の上皮性非腫瘍性病変に対して用いられる用語である.ほとんどが無症状である.
A胃過形成性ポリープ
・Helicobacter pylori(H. pylori)感染による胃炎などの慢性炎症を背景に,粘膜傷害に対する過剰な再生により発生する.
・典型像は,半球状の発赤調隆起性病変で,境界は明瞭である.
・大きくなると貧血や吐血・下血を生じることがある.
・表面の凹凸不整や不均一な色調変化を伴う場合は,癌の合併を念頭におく必要がある.
・内視鏡像が類似するラズベリー様腺窩上皮型胃癌が着目されているが,この癌はH. pylori未感染胃に発生することが多い.
B胃底腺ポリープ
・H. pylori未感染で萎縮性変化のない胃底腺領域に多発しやすい.
・胃の良性非腫瘍性ポリープのなかで最も高頻度で,H. pylori感染率の低下やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期投与を背景に増加している.
・典型像は,同色調から淡発赤調の,表面平滑な半球状の隆起性病変で,境界は明瞭である.
・家族性大腸腺腫症(FAP:familial adenomatous polyposis)に伴う多発胃底腺ポリープは癌・腺腫を合併することがあり,注意を要する.
◆治療方針
A胃過形成性ポリープ
H. pylori感染胃炎に伴う場合は,除菌療法によって約80%でポリープの縮小や消失が期待できる.出血,通過障害などの有症状で緊急性を要する場合,あるいは癌の合併の場合は内視鏡的切除を考慮する.
B胃底腺ポリープ
悪性化のリスクはほとんどなく,切除の必要はない.出血などの症状がある場合は切除を検討する.PPI長期投与で増大する場合は,可能であればPPIを中止