今日の診療
治療指針

吸収不良症候群
malabsorption syndrome
仲瀬裕志
(札幌医科大学教授・消化器内科学)

頻度 情報なし

◆病態と診断

A病態

・さまざまな食事性栄養素の腸管吸収障害により症状を呈する状態の総称である.

・大半の吸収不良症候群は脂肪便を伴っている.

・吸収不良症候群の原因():①消化不良,②十二指腸内の胆汁酸濃度低下およびミセル形成障害,③粘膜吸収障害,粘膜の喪失または欠損,④栄養素の腸管への移送障害または腸管からの移送障害あるいはその両者,⑤内分泌および代謝性疾患.

B診断

・病歴,体重減少,下痢,浮腫などの症状,および血液データにおける貧血低蛋白血症,低アルブミン血症,低コレステロール血症,低Ca血症などから本症を疑うことである.上記の原因を考え,内分泌検査を必須で行う.

・吸収不良を確認する方法として,ズダンⅢ染色が便中脂肪の増加を確認するのに使用される.しかし,便中脂肪の定量と脂肪便の確定診断のためには72時間の蓄便を,できれば特定の食事にしたうえで行う必要がある.

・炭水化物の吸収を調べるためのD-キシロース吸収試験では,上部小腸の粘膜機能を調べることができる.

・膵外分泌機能を調べるため,PFD(pancreatic functioning diagnostant)試験を行う.

・上記の検査にて吸収不良が明らかな場合は,消化管ならびに膵臓・胆道系の器質的疾患の有無について各種画像検査を行う.

・特に,脂肪便が確認された患者や3週間を超えて持続する慢性下痢の患者では,小腸粘膜の生検は必須である.

◆治療方針

 原疾患の治療が基本である.セリアック病など,食事内容が症状悪化に関連する病態では食事内容の制限を行う.

 栄養状態の改善を目的として,経口摂取が可能な場合は経腸栄養剤を,経口摂取不能な場合は中心静脈栄養療法を選択する.

 吸収不良の原因として,慢性膵炎などの膵外分泌機能不全に起因する場合や,二次性乳糖不耐が考えられる場合には,消化酵素の補充を行う.

 腸内細菌増殖が異常なため

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