今日の診療
治療指針

蛋白漏出性胃腸症
protein-losing gastroenteropathy
岡本 真
(JR東京総合病院・消化器内科部長)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・さまざまな疾患が原因となり,原疾患の治療が基本である.高蛋白・低脂肪の栄養療法も行う.

◆病態と診断

A病態

・蛋白漏出性胃腸症は,消化管粘膜から血漿蛋白,特にアルブミンが過剰に漏出することによって低蛋白血症をきたす疾患の総称である.

・さまざまな疾患が原因となり,消化管以外の疾患も含まれる.蛋白漏出の機序から次の3つに分類される.

1)潰瘍性消化管疾患(粘膜上皮の異常):炎症性腸疾患(クローン病,潰瘍性大腸炎など),悪性腫瘍,クロンカイト・カナダ症候群など.

2)非潰瘍性消化管疾患(毛細血管透過性の亢進):メネトリエ病,アミロイドーシス,自己免疫性疾患(SLE,関節リウマチなど),好酸球性胃腸症など.

3)消化管リンパ系のうっ滞・閉塞や間質圧亢進をきたす疾患:腸リンパ管拡張症,悪性リンパ腫,右心不全,収縮性心外膜炎,肝硬変など.

B診断

・低アルブミン血症による浮腫が主症状である.高度になれば胸水や腹水を伴う.原疾患や腸管浮腫により,下痢,腹痛,腹部膨満などを生じる.

・血液検査では,低蛋白血症,低アルブミン血症がみられる.アルブミンだけでなくグロブリンも低下することが特徴である.

・便中のα1 アンチトリプシンクリアランス試験は,蛋白漏出を定量化する検査である.3日間の蓄便が必要である.

99mTcヒト血清アルブミンシンチグラフィは,蛋白漏出の有無とともに,漏出部位を推定することができる.

・原因検索のため,内視鏡検査や組織生検,消化管造影検査,CT検査などを行う.

・低蛋白血症をきたす疾患として,低栄養,肝硬変,ネフローゼ症候群,吸収不良症候群などを鑑別する.

◆治療方針

 原疾患の治療と栄養療法を行う.

A栄養療法

 高蛋白・低脂肪食が基本である.蛋白質2~3g/kg/日を目安とする.脂質としては中鎖脂肪酸がよい.重症例では成分栄養剤や半消化態栄養剤を用いる.

B薬物

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