今日の診療
治療指針

自己免疫性肝炎
autoimmune hepatitis(AIH)
阿部雅則
(愛媛大学大学院准教授・消化器・内分泌・代謝内科学(第三内科))

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GL自己免疫性肝炎(AIH)診療ガイドライン(2021年)

治療のポイント

・原則として副腎皮質ステロイドによる薬物療法が必要であり,治療目標は血清トランスアミナーゼを持続的に基準値範囲内でコントロールすることである.

・副腎皮質ステロイドの早すぎる減量は再燃の原因となるために,減量は慎重に行うべきである.

・繰り返し再燃する症例ではアザチオプリンの併用または変更を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・AIHは,主に中年以降の女性に好発し,通常は慢性,進行性に肝障害をきたす疾患である.

・原因不明の肝疾患であるが,発症・進展には遺伝的素因,自己免疫機序が関与することが想定されている.

B診断

・国際AIHグループ(IAIHG)の国際診断基準を参考にして,厚生労働省「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班の診断指針により診断する.

・診断は基本的に除外診断であり,肝機能検査異常をきたす他の原因を除外することが重要である.典型例では,血清トランスアミナーゼ高値がみられ,加えて抗核抗体,抗平滑筋抗体などの自己抗体陽性,血清IgG高値の所見がみられる.組織学的にはリンパ球,形質細胞浸潤を伴うインターフェイス肝炎像が高頻度にみられる.また,小葉内の肝細胞壊死,肝細胞ロゼット形成などがみられる.

・「難治性の肝・胆道疾患に関する調査研究」班の診断指針の重症度判定を用いて重症度を判定する.

◆治療方針

 AIHは適切な治療が行われないと肝硬変や肝不全に進展するため,原則として副腎皮質ステロイドによる薬物療法が必要であり,本邦のAIHでは90%以上に奏効する.治療目標は血清トランスアミナーゼを持続的に基準値範囲内(ALT 30U/L以下)でコントロールすることである.適切な免疫抑制療法が行われた症例では予後良好である.副腎皮質ステロイド治療中止後は高率に再燃することから,原則として治療中止は困難である.

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