頻度 あまりみない
治療のポイント
・敗血症性ショックやDICを合併することもあり,すみやかな抗菌薬治療の開始が重要である.
・腹痛などの有症状例,5cm以上の大きな膿瘍例,抗菌薬治療の反応不良例では穿刺ドレナージを検討する.
◆病態と診断
A病態
・肝臓外から肝内に細菌が侵入し増殖することにより,肝組織が融解壊死を起こして膿瘍が形成される.
・感染経路には経胆道性,経門脈性,経肝動脈性,周囲感染巣からの直接波及などがある.胆道閉塞や胆管炎が肝臓内に波及する経胆道性感染が最も多い.
・危険因子には,糖尿病,基礎となる肝胆道または膵臓疾患,肝移植後,悪性腫瘍,プロトンポンプ阻害薬(PPI:proton pump inhibitor)内服などがある.
B診断
・症状は上腹部痛,発熱など非特異的であり,血液検査にてCRPや白血球数の上昇,肝胆道系酵素上昇などがみられる.
・腹部エコーにて,内部壊死に伴う液状成分や嚢状の低エコー病変を認める.腹部造影CT・MRIにて膿瘍腔は低濃度域として認められ,周囲の造影効果(rim enhancement)や膿瘍内部の隔壁に造影効果がみられる.動脈相で膿瘍を含む肝実質が区域性に濃染する所見もみられる.炎症を伴う悪性腫瘍との鑑別が必要になることもある.
・血液培養や穿刺液培養で起因菌を同定し,抗菌薬の選択を検討する.
◆治療方針
肝膿瘍の診断がつき次第,すみやかに経静脈的な抗菌薬投与にて加療を行う.症例によっては経皮的に膿瘍を穿刺ドレナージし,チューブ留置を検討する.
A抗菌薬投与による保存的治療
1.初期治療
経験的治療:本邦では起因菌として特にKlebsiella pneumoniae,Escherichia coliなどグラム陰性菌が多いため,まず胆道移行性の良好な第3世代セフェム系抗菌薬の静脈内投与を行う.
Px処方例 下記のいずれかを用いる.
1)セフトリアキソン(ロセ