今日の診療
治療指針

慢性膵炎
chronic pancreatitis
伊藤鉄英
(福岡山王病院・膵臓内科・神経内分泌腫瘍センター長)

頻度 割合みる

GL慢性膵炎診療ガイドライン2021 改訂第3版

治療のポイント

・慢性膵炎の内科的治療には,その成因を踏まえた生活指導と病期に適した食事療法,薬物療法および内視鏡的治療を行うことが重要である.

・アルコール性慢性膵炎の治療には断酒指導が,また慢性膵炎の治療として禁煙指導を行うことは有用である.

・慢性膵炎患者に対する病期を考慮した栄養療法は有用である.腹痛を有する代償期の患者では脂肪制限が有用であるが,非代償期の患者には十分な膵消化酵素薬補充療法を行ったうえで脂肪を制限しない食事指導を行う.

・膵性糖尿病の治療は十分量の膵消化酵素薬を投与したうえで血糖コントロールの目標を決定することが重要である.

◆病態と診断

A病態

・慢性膵炎とは,遺伝や環境要因,その他の危険因子を有し,実質への傷害やストレスに対して持続的な病的反応を生じる,膵臓の病的線維化炎症症候群である(mechanistic definition).

・成因によってアルコール性と非アルコール性に分類される.

・一般に腹痛や腹部圧痛などの臨床症状が特徴的であり,進行とともに膵臓の外分泌・内分泌機能が低下し,消化吸収不全および膵性糖尿病が出現する慢性炎症疾患である.

B診断

・慢性膵炎の診断は「慢性膵炎臨床診断基準2019」に基づいて行う.

・診断項目は,①特徴的な画像所見,②特徴的な組織所見,③反復する上腹部痛または背部痛,④血中または尿中膵酵素値の異常,⑤膵外分泌障害,⑥1日60g以上(純エタノール換算)の持続する飲酒歴または膵炎関連遺伝子異常,⑦急性膵炎の既往,の7項目で構成されている.

・慢性膵炎確診例は,①または②の確診所見があるもの,あるいは①または②の準確診所見が得られ,臨床症候として③④⑤のうち2項目以上がみられるものとする.

・③~⑦のいずれか3項目以上が認められる症例で,早期慢性膵炎の画像所見が確認されるものを

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?