今日の診療
治療指針

肝疾患患者の生活指導
lifestyle intervention for patients with liver disease
川口 巧
(久留米大学教授・消化器内科)

ポイント

・食事・運動療法は,予後にかかわることを説明するとともに,食事と身体活動を診察時に評価し,患者に行動変容を促す.

・低栄養状態の肝硬変患者には,分割食や就寝前補食を推奨する.

・肥満を合併する脂肪肝患者には,エネルギー,炭水化物や飽和脂肪酸の過剰摂取に留意した食事指導を行う.

・過度の安静は控え,日常生活を含め約6,000歩/日の適切な身体活動を推奨する.

・運動療法は,転倒,肝不全,静脈瘤破裂,心血管疾患のリスクを高めうることから,安全性に配慮して指導する.

◆病態と診断

・肝硬変患者が①血清Alb値≦3.5g/dL,②Child-Pugh class BまたはC,③サルコペニアの3項目のいずれかを満たす場合は低栄養状態と判定する.

◆治療方針

 下記に指導例を記載する.ただし,日本消化器病学会・日本肝臓学会編集「肝硬変診療ガイドライン2020」と「NAFLD/NASH診療ガイドライン2020」も参照されたい.また,日本肝臓学会「肝疾患におけるサルコペニア判定基準」に準じてサルコペニアについても評価することが望ましい.

A推奨摂取量と身体活動量

 摂取エネルギーの目安を30kcal/kg/日とする.ただし,耐糖能異常がある場合は25kcal/kg/日とする.

 蛋白質必要量は1.0~1.5g/kg/日であるが,顕性肝性脳症を認める場合は0.5~0.7g/kg/日+BCAA高含有肝不全経腸栄養剤を用いる.炭水化物エネルギー比率50~60%,脂質エネルギー比率20~25%とする.

 日常生活を含め約6,000歩/日の適切な身体活動を維持する.

B低栄養状態の肝硬変

1.食事指導

 分割食・就寝前補食を推奨する.1日の総摂取カロリーより約200kcalを分割し,食間もしくは就寝前に摂取するよう指導する.腹水合併例では,食事の塩分は5~7g/日とする.

2.栄養療法

a.肝性脳症合併例(肝不全用経口栄養剤

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