今日の診療
治療指針

輸液療法
fluid replacement therapy
長浜正彦
(聖路加国際病院・腎臓内科医長(東京))

ニュートピックス

・「日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG2020)」と「Surviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG2021)」の2つの敗血症ガイドラインが改訂・出版された.両ガイドラインで初期輸液に関して異なる点は,SSCG2021では輸液製剤の第1選択を生理食塩液でなく成分調整晶質液とし,過剰輸液を避けるための輸液制限に関してエビデンス不足として推奨を提示していない点である.4年後の改訂に注目したい.

治療のポイント

・輸液療法の目的は体液恒常性の改善と維持であり,「体液管理」,「栄養補給」,「薬剤投与」,「血管確保」に大別できる.

・輸液療法は不足分を補充する「補充輸液」と,経口摂取分を維持するための「維持輸液」を合わせたものである.

・補充輸液の際は体液コンパートメントのどこに(細胞内vs細胞外),何が(自由水vs溶質),どのくらい欠乏しているかを,病歴,バイタルサイン,検査データなどから推測する.

◆病態と診断

・体液コンパートメントは大別して総体液の1/3を占める細胞外液と2/3を占める細胞内液が,電解質を通しにくい細胞膜で仕切られている.さらに,細胞外液はその1/4を占める血漿と3/4を占める間質液(浮腫の際に増大する)に分かれ,血管壁によって仕切られている().

・体液量が減少した状態を総称して「脱水」というが,細胞内液の欠乏は「dehydration(狭義の脱水)」で血漿浸透圧に影響を及ぼす病態,細胞外液の欠乏は「volume depletion(細胞外液欠乏)」で循環動態に影響を及ぼす病態と区別される.

・英国のNICE(National Institute for Health and Care Excellence)によれば,輸液療法は5R:fluid Resuscitation(初期蘇生輸液),Routine main

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