ニュートピックス
・SGLT2阻害薬の心臓・腎臓に対する臓器保護作用が,複数の臨床研究で認められ,慢性心不全・慢性腎臓病に対する保険適用を受けた.
治療のポイント
・体液過剰による浮腫・うっ血の状態は,うっ血性心不全や慢性腎臓病の予後悪化因子であることが知られている.よって,体液過剰を惹起した病態の改善を目指すとともに,薬物療法により,適切な利尿をはかることが重要である.
・不十分な利尿はうっ血の残存となり,また,過剰な利尿は神経液性因子の活性化や血圧低下・循環不全・腎障害などを引き起こすことになる.
A利尿薬の特徴
利尿薬は,腎尿細管細胞に作用して,尿量を増加させる作用を有する薬剤を指す.利尿薬は,尿細管における溶質(主としてNa)の再吸収を抑制(Na利尿)するものと,水の再吸収を抑制(水利尿)するものに分けられる.Na利尿をきたす薬剤には,古典的な利尿薬〔ループ利尿薬・サイアザイド系利尿薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)など〕があり,体内に貯留したNaを排泄させ,浮腫・うっ血の改善を目的に使用される.一方,水利尿を主にきたす薬剤として,抗利尿ホルモン(ADH)作用を抑制するV2 受容体拮抗薬(vaptan系薬剤)があり,体液過剰の改善や水貯留による低Na血症の治療に用いられる.
近年,近位尿細管でグルコースの再吸収を抑制して浸透圧利尿をきたすSGLT2阻害薬(水利尿>Na利尿)が,従来薬と異なるユニークな薬理作用を有し,その臓器保護作用のために,頻用されつつある.
B代表的な利尿薬とその特徴
1.ループ利尿薬
ループ利尿薬は,糸球体でろ過されたNaの約20~30%を再吸収するヘンレの太い上行脚の管腔側から,Na-K-2Cl co-transporter(NKCC2)を阻害することから,強力なNa利尿作用を有する薬剤である.腎機能が低下しても利尿効果を有し,さらに,静脈内投
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