今日の診療
治療指針

IgA腎症,IgA血管炎(紫斑病性腎炎)
IgA nephropathy and IgA vasculitis(purpura nephritis)
鈴木 仁
(順天堂大学医学部附属浦安病院腎・高血圧内科・教授)

Ⅰ.IgA腎症

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GLエビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020

GL血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)

ニュートピックス

・DAPA-CKD試験に登録されたIgA腎症患者のサブグループ解析では,ダパグリフロジン投与群で腎機能低下のリスクが低下したという報告があり,今後IgA腎症に対する治療選択の1つとなる可能性がある.

・IgA腎症の病態に基づく分子標的治療薬の国際治験が,本邦でも開始されている.

治療のポイント

・IgA腎症では疾患特異的な治療法は開発されていないが,レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬,副腎皮質ステロイド(PSL)薬,口蓋扁桃摘出術(扁摘)(+PSLパルス併用療法:扁摘パルス療法)などが選択される.

・治療の適応は,腎機能と尿蛋白量に加えて,年齢や腎病理組織重症度も含めて総合的に判断される.

◆病態と診断

A病態

・IgA腎症の初発症状は血尿が主体で,本邦における発見機転は健診時の血尿が約70%を占める.感冒様症状後に肉眼的血尿を呈することがあるが,ネフローゼ症候群の発現は比較的まれである.

・糖鎖修飾異常を呈するIgA1(糖鎖異常IgA1)ならびに関連免疫複合体が病態に深く関与するが,その産生機序はいまだ明らかではない.本症では扁桃炎や上気道炎後に尿所見が増悪することから,上気道粘膜を主体とする粘膜免疫応答異常の存在が示唆されている.

B診断

・IgA腎症では,必発所見として持続的顕微鏡的血尿,頻発所見として間欠的または持続的蛋白尿を認めるとされている.本症に特異的な血液検査所見はないが,約半数の症例で血清IgA高値(315mg/dL以上)を認める.

・本症は腎生検によってのみ診断され,腎メサンギウム領域を主とするIgA優位な沈着を認める腎炎である.IgGやIgMの沈着がみられる場合もあり,C3 はほとんどの症例で陽性である.

・本邦では

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