今日の診療
治療指針

急性腎障害(急性腎不全)
acute kidney injury(AKI)/acute renal failure
寺田典生
(高知大学教授・内分泌代謝・腎臓内科学)

頻度 よくみる

GLAKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016

治療のポイント

・急性腎障害(AKI)の治療としては腎前性・腎性・腎後性の鑑別を行い,原因を早期に除去することが必要である.

・腎前性AKIに対しては体液量欠乏があれば補液による是正,血圧低下があれば昇圧薬,心機能低下があれば強心薬などにより,血行動態を安定させる.

・腎後性AKIは,泌尿器科的処置により尿路閉塞や狭窄の解除を行う.

・薬剤性腎障害が疑われた場合,被疑薬を中止あるいは減量する.

◆病態と診断

A疾患概念・定義

・急性腎障害(AKI)は,以前の急性腎不全を含む疾患概念で,急激(数時間~数日)な腎機能の低下によって,代謝産物の蓄積,電解質異常,細胞外液調整異常,貧血などを生ずる.

・2012年に国際的な腎疾患の予後向上を目指す専門機関であるKDIGO(Kidney Disease:Improving Global Outcomes)から診療ガイドラインが発表され,AKIは血清クレアチニン(SCr)値の48時間以内の0.3mg/dL以上の上昇,または7日以内での基礎値からの50%以上の上昇,または6時間以上にわたる尿量低下(0.5mL/kg体重/時間未満)で定義された.このガイドラインにおいては,腎機能低下や尿量低下の程度・持続時間などによって,病期分類も行われている.わが国で作成された「AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016」でもKDIGOの診断基準を用いることが推奨されている.

・尿量低下もAKIの定義として用いられるが,薬剤性AKIなどでは,尿量低下がはっきりしない非乏尿性AKIも存在する.特に集中治療領域では血清クレアチニンと尿量の両方の診断により,より正確に予後予測もできるという報告がある.

・AKIの頻度は高齢化などにより高まってきており,入院患者の5~10%や集中治療の患者では30~40%と非常に高頻度

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?