今日の診療
治療指針

腹膜透析の合併症
peritoneal dialysis(PD)-related complications
鶴屋和彦
(奈良県立医科大学教授・腎臓内科学)

GL腹膜透析ガイドライン 2019

治療のポイント

・腹膜炎は,腹痛,透析排液混濁,透析排液中の白血球数が100/μL以上で多核白血球が50%以上,透析排液培養陽性で診断し,起因菌同定のための検体を採取したら,すみやかに抗菌薬の経験的治療を開始する.

・培養結果と感受性が判明したのちは,適切な抗菌薬に変更して適切な期間,治療を行う.

・出口部感染は原因菌の同定が重要で,判明するまでは皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌の感染を念頭において初期治療を開始する.

◆病態と診断

A病態

1.腹膜透析(PD)関連腹膜炎

 腹腔内に細菌が感染することにより腹痛,発熱,悪心・嘔吐,排液混濁を呈する病態で,外因性と内因性がある.外因性には,透析液交換時にカテーテルを通して細菌が侵入する経カテーテル感染,出口部トンネル感染の波及による傍カテーテル感染,カテーテル挿入時の感染の3経路があり,内因性には,憩室炎などからの菌のトランスロケーションによる経腸管感染,血行性感染,経腟感染,その他,腹腔内膿瘍などがある.

2.腹膜カテーテル関連感染症

 カテーテル関連感染症は,「腹膜透析カテーテルの組織通過部分の外周囲における病原体感染」と定義され,皮膚発赤の有無にかかわらず出口からの膿性滲出液が認められる出口部感染と,皮下トンネル部に沿って炎症所見が認められる皮下トンネル感染がある.

B診断

1.PD関連腹膜炎

 腹膜炎の診断は,①腹痛あるいは透析排液混濁,②透析排液中の白血球数が100/μL以上または0.1×109/L以上(最低2時間の貯留後)で多核白血球が50%以上,③透析排液培養陽性のうちの少なくとも2つを満たす場合に診断する.自動腹膜透析(APD:automated peritoneal dialysis)の患者では,好中球の比率が50%以上であれば,たとえ白血球数が100/μL以下であっても腹膜炎と診断

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