今日の診療
治療指針

高P血症,低P血症
hyperphosphatemia,hypophosphatemia
濱野高行
(名古屋市立大学大学院教授・腎臓内科学)

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ニュートピックス

・血液透析施行中の高P血症に対して,腸管Na/H交換輸送体阻害剤のtenapanor(KHK7791)が開発中であり,国内第Ⅲ相臨床試験の結果も公表され発売を控えている.この薬剤はP吸着薬ではなくP吸収阻害薬に分類される.主な副作用は軟便である.

治療のポイント

・薬物療法だけにこだわらずに,食事,透析量などで薬剤を減らせることに留意する.

・腎不全における高P血症においては,便秘があるとP吸着薬が効きにくいので,便秘の管理が同時に重要である.

◆病態と診断

 いずれの病態の把握のためにも腎でのP排泄の評価が重要であり,末期腎不全以外では,尿細管P再吸収閾値(TmP/GFR)などの測定が有用である.

A高P血症の病態と診断

・腎不全が最大の原因である.腎での排泄低下,腸管からのP吸収の増加,細胞内から細胞外へのシフトが主因であり,まれなものとして偽性高P血症(高ガンマグロブリン血症,高ビリルビン血症,脂質異常症)がある().

・腎不全が原因でなければ,急性か慢性かを診断することが重要であり,急性の場合は早急に治療を要する病態(溶血,腫瘍崩壊,横紋筋融解,乳酸・ケトアシドーシス,高血糖,ビタミンD中毒など)のことが多い.

・診断に関しては,血清P濃度のその施設での上限値を超えていることで診断できる.ただし,小児の正常範囲は成人より高いことに注意されたい.

B低P血症の病態と診断

・血清P濃度が2.5mg/dL未満の状態を指す.腸管からの吸収低下,Pの細胞内へのシフト,腎からの排泄増加の3つが主な原因である().急性発症はシフトが多く,慢性的低P血症は,腎過剰排泄が原因のことが多い.

・臨床的に多いのは,内臓肥満,ステロイドの使用,アルコール多飲者,下痢に伴うものであり,通常は軽度で1mg/dL以下になることはない.薬物(鉄の静注やMg含有制酸剤など)が原因となるこ

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