今日の診療
治療指針

血液疾患 最近の動向
鈴木隆浩
(北里大学主任教授・血液内科学)

◆病態と診断

A学会での主なトピックス

 造血器疾患における遺伝学的,分子生物学的研究の進歩は著しく,新たな知見が毎年のように発表されている.また,近年では,血液学的に健常であっても加齢に伴い体内に異常クローンが発生している人口割合が増えることが明らかとなり,さらにこのような異常クローンがその後の疾患発症母地にもなりうることなどが明らかになるなど,clonal hematopoiesisの概念が確立してきた.血液関連学会では毎年遺伝子関連の特別セッションが設けられ,多くの注目を集めている.また,その過程で,DDX41遺伝子変異など造血器腫瘍発生の原因になる新たな生殖細胞系列の変異も明らかになってきており,造血器腫瘍の病態理解は新たな時代に入っている.

 遺伝子解析の進歩に伴って期待されるのが次世代シークエンサーを用いたクリニカルシークエンスの臨床応用である.これはすでに固形癌領域においては実用化され,臨床現場で利用されているが,造血器腫瘍においても数年以内に保険収載されることが期待されており,日本血液学会では「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」が策定されるなど,次世代診療の準備が着々と進んでいる.

 治療薬の進歩もめざましく,標的型抗腫瘍薬が次々に上市されている.すでに広く用いられているチロシンキナーゼ阻害薬のほか,最近では二重特異性T細胞誘導抗体製剤(BiTE)やキメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR-T)療法(→キーワード2023)が保険収載され,これらの薬剤についての知見が学会では数多く報告されている.特にCAR-T療法は悪性リンパ腫に適応が拡大されてから施行数が増加しており,その適応や適切な施行タイミングについて議論が活発化している.

◆治療

 血液疾患に対しては,毎年多くの薬剤が新規に上市,適応追加されているが,その多くは標的型治療をコンセプトとした薬剤である().

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