今日の診療
治療指針

骨髄穿刺法,生検法(適応と方法)
bone marrow aspiration and biopsy
増田亜希子
(虎の門病院分院・臨床検査部部長)

A骨髄検査の適応と禁忌

1.骨髄検査の適応

 血球数や血液像に異常を認める場合,原因精査を目的として骨髄検査を行う.骨髄検査には,骨髄液を吸引採取する方法(骨髄穿刺)と骨髄組織を採取する方法(骨髄生検)があり,目的に応じていずれか一方または両方を行う.検査後の安静時間は30分(以上)であり,外来でも施行可能な検査である.

 骨髄検査の適応をに示す.骨髄穿刺が吸引不能(dry tap)の場合,骨髄生検が必要となる.骨髄生検は,細胞密度の評価(特に再生不良性貧血が疑われる場合)や線維化の有無,リンパ腫や癌の骨髄浸潤の評価に有用である.

2.骨髄検査の禁忌

 重度の凝固異常,播種性血管内凝固などの出血傾向では禁忌だが,急性白血病の疑いでは診断を優先して検査を行う場合がある.血小板減少は禁忌ではない.抗血小板薬や抗凝固薬の投与中でも検査は可能である.いずれの場合も,圧迫止血や検査後の止血確認を十分に行うなど,慎重に対処する.

B骨髄穿刺と生検の方法(骨髄検査の方法)

1.穿刺部位の選択

 採取部位は後腸骨稜が第1選択である.後腸骨稜,前腸骨稜,胸骨から採取可能だが,日本血液学会では安全性の観点から,穿刺部位として腸骨を推奨している.腸骨から実施できない特別な理由(腹臥位がとれない,腸骨の放射線治療歴,高度の肥満など)のある場合のみ,胸骨(正中第2肋間)を選択する.胸骨穿刺に伴う出血,心タンポナーデなどの致死的な合併症が報告されているため,胸骨からの穿刺は経験豊富な医師による実施が望ましい.腸骨では骨髄穿刺・骨髄生検のいずれも実施可能だが,胸骨では骨髄穿刺のみ実施できる.胸骨からの生検は禁忌である.

2.説明と同意

 検査前に目的,方法,合併症について説明し,文書による同意を得る.消毒薬や局所麻酔薬のアレルギーの有無,既往歴や凝固異常の有無も確認しておく.頻度は低いが,出血,感染,骨折などの合併症があ

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