頻度 あまりみない
治療のポイント
・「造血器腫瘍診療ガイドライン」のフローチャートに従い,予後リスクに応じて治療法を選択する.
・JAK阻害薬ルキソリチニブにより,脾腫,全身症状の改善に加え,生命予後改善も期待される.
◆病態と診断
A病態
・造血幹細胞レベルで生じたJAK2,CALR(calreticulin),MPL変異などにより,巨核球や好中球系細胞などが骨髄でクローン性に異常増殖する,慢性進行性の骨髄増殖性腫瘍である.
・病初期は骨髄の線維化はほとんど認めず,前線維化期/初期とよばれる.進行すると骨髄の線維化が著明な線維化期となり,骨髄における造血能は低下し,髄外造血,肝脾腫が生じる.
・真性赤血球増加症,本態性血小板血症に続発する2次性骨髄線維症は,生じている遺伝子変異の種類,病態が原発性骨髄線維症と同様であり,治療方針も同一である.
B診断
・前線維化期/初期は自他覚症状に乏しい.
・線維化期では,発熱,夜間盗汗,骨痛,食欲低下,体重減少,倦怠感などの持続する全身症状,腹部膨満感,肝脾腫がみられる.貧血,血小板減少を呈することが多く,末梢血に変形した赤血球(標的細胞),骨髄芽球,赤芽球の出現(白赤芽球症)をみる.
・骨髄では,異型性を伴う巨核球の増加と集簇,骨髄系細胞の増殖が生じている.前線維化期/初期では骨髄の線維化は認められないが,線維化期では細網線維,膠原線維の増加がみられ,造血細胞は減少する.
・80%以上の患者にJAK2,CALR,MPL変異のいずれかが認められ診断に有用である.しかし,これらの変異は原発性骨髄線維症に特異的ではなく,真性赤血球増加症,本態性血小板血症にもみられることに留意が必要である.
◆治療方針
前線維化期/早期で無症状の場合は経過観察を,症状がある場合は対症療法を行う.
線維化期では,年齢>65歳,発熱・夜間盗汗・体重減少などの全身症状が持続,Hb<10g
関連リンク
- 治療薬マニュアル2023/ルキソリチニブリン酸塩《ジャカビ》
- 治療薬マニュアル2023/メテノロン酢酸エステル《プリモボラン》
- 臨床検査データブック 2023-2024/チミジンキナーゼ〔TK〕活性《デオキシチミジンキナーゼ活性》 [保] 233点
- 臨床検査データブック 2023-2024/慢性骨髄性白血病(CML)
- 新臨床内科学 第10版/【8】骨髄異形成症候群
- 新臨床内科学 第10版/【11】有毛細胞白血病
- 新臨床内科学 第10版/【14】本態性血小板血症
- 新臨床内科学 第10版/【15】骨髄線維症
- 新臨床内科学 第10版/8 キャッスルマン病
- 新臨床内科学 第10版/1 先天性好中球減少症
- 今日の診断指針 第8版/骨髄増殖性腫瘍