今日の診療
治療指針

播種性血管内凝固症候群(DIC)
disseminated intravascular coagulation(DIC)
池添隆之
(福島県立医科大学主任教授・血液内科学)

頻度 (敗血症の約40%,急性骨髄性白血病の約30%,悪性リンパ腫の約10%に合併する.固形癌における合併率は5%程度にとどまるが,遠隔転移を伴う進行癌ではその合併率は上がる)

GL日本版敗血症診療ガイドライン2020

GL造血器腫瘍診療ガイドライン(2018年版補訂版)

治療のポイント

・DICの原因となっている基礎疾患の治療を行う.

・敗血症性DICでは抗凝固療法を行うことで患者転帰が改善することが示されている.

・敗血症性DICに使用する抗凝固薬として,アンチトロンビン(AT)製剤と遺伝子組換えトロンボモジュリン(rTM)製剤が推奨される.

・急性前骨髄球性白血病に合併するDICでは,血小板数3~5万/μL,フィブリノゲン150mg/dL以上を保つように血小板と新鮮凍結血漿の補充を行う.

・rTM製剤は線溶亢進型,線溶抑制型のいずれのタイプのDICに対しても使用可能である.

◆病態と診断

A病態

・DICは基礎疾患の存在のもと,全身性に凝固系と線溶系の活性化が惹起される後天性の血栓性疾患である.

・線溶系の活性化の程度は基礎疾患ごとに大きく異なり,線溶抑制型と線溶亢進型の2つの病型に分類される.

・線溶抑制型DICの代表的な基礎疾患は敗血症である.

・敗血症性DICでは,炎症性サイトカインの作用で急性期蛋白であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター1(PAI-1)の産生が増加する結果,プラスミンの産生が抑制される.プラスミンによる微小血栓溶解が進まないため末梢循環不全による臓器機能障害を合併する.

・線溶亢進型DICの代表的な基礎疾患は,急性前骨髄球性白血病(APL:acute promyelocytic leukemia)である.

・APL細胞はその表面にアネキシンA2とS100A10の4量体を発現し,これがプラスミンの活性化を10~100倍増強する.

・APLに合併するDICでは,血小板減少とフ

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