今日の診療
治療指針

糖尿病の食事指導
dietary management of diabetes care
窪田直人
(東京大学准教授・糖尿病・代謝内科)

ニュートピックス

・「高齢者糖尿病治療ガイド2021」が発刊された.

治療のポイント

・総エネルギー摂取量の適正化とバランスのとれた食事を基本とする.

・食物繊維を積極的に摂取する.

・清涼飲料水の摂取を控える.

・高齢者糖尿病では低栄養,フレイル・サルコペニア,食事のQOL維持に配慮する.

・超加工食品を控え,未加工食品の摂取を心がける.

◆治療方針

A食事療法の基本

1.適正な総エネルギー摂取量とバランスのとれた食事

 総エネルギー摂取量の適正化は,肥満の是正やインスリン抵抗性の改善という面から非常に有用である.総エネルギー摂取量は「目標体重(kg)」と「身体活動レベルと病態によるエネルギー係数(kcal/kg)」を乗じて算出する.目標とすべき体重は従来BMI 22の体重が標準体重として用いられてきたが,糖尿病患者を対象とした研究で最も死亡率の低いBMIは20~25にあり,特に75歳以上の高齢者ではBMI 25以上でも死亡率の増加を認めないことが示された.そのため「目標体重」は一律に定めるのではなく,患者の現在の体重に基づき,年齢や臓器障害,代謝状態を評価しつつ,個々に設定し,目標となる体重を段階的に再設定するなど柔軟に対応する.「目標体重」の目安は,65歳未満ではBMI 22の体重,65歳以上はBMI 22~25の体重であり,特に75歳以上の後期高齢者では現体重に基づきフレイルやADL低下,合併症,体組成,身長の短縮,摂食状況,代謝状態の評価を踏まえ適宜判断する.「エネルギー係数」は,①軽い労作(大部分が坐位の静的活動)25~30kcal/kg,②普通の労作(坐位中心だが通勤・家事,軽い運動を含む)30~35kcal/kg,③重い労作(力仕事,活発な運動習慣がある)35kcal/kg~からの3段階より選択する.

 エネルギー産生栄養素比率は,「日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の

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