今日の診療
治療指針

脂質異常症―高TG血症,低HDL-C血症
dyslipidemia―hypertriglyceridemia,hypo-HDL-cholesterolemia
木庭新治
(昭和大学教授・循環器内科学)

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GL動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

GL動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年版

ニュートピックス

・TGは食後上昇し,随時TG 175mg/dL以上は高TG血症と診断し,動脈硬化性疾患のリスク因子である.

治療のポイント

・適正体重を維持する.アルコールの過剰摂取を制限する.

・食事・運動療法の併用が非常に有効である.

・食事療法として糖質エネルギー比率を低めにする.n-3PUFAの摂取を増やす.

・有酸素運動が有効である.

・薬物療法としてフィブラート,n-3PUFA製剤,ニコチン酸誘導体を用いる.

◆病態と診断

A病態

・高TG血症では,TGリッチリポ蛋白(TRL)であるカイロミクロンや超低比重リポ蛋白(VLDL:very low density lipoprotein)およびその代謝物のレムナントリポ蛋白が増加する.TRLが増加するとコレステロールエステル転送蛋白を介してTRL粒子中のTGとHDL粒子中のコレステロールが交換され,HDL-Cが低下する.

・TG正常ではHDL以外の粒子(non-HDL)の90%はLDLである.TGが上昇するとnon-HDL-Cが上昇し,TGが400mg/dLを超えるとLDL-Cは低下し,TRL-Cが増加する.TGが600mg/dLを超えるとnon-HDLの主体がLDLからTRLになる.

・TGの上昇とともにLDLの組成が変化し,large buoyant LDLが減少しsmall dense LDLが増加する.TG 200mg/dLを超えるとsmall dense LDLが著明に増加する.LDLのなかでsmall dense LDLの動脈硬化リスクが高いことが知られている.

・TG 500mg/dL以上では急性膵炎のリスクが高まる.

・高TG血症と低HDL-C血症はメタボリックシンドローム,糖尿病の脂質異常症の特徴であり,

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