今日の診療
治療指針

鉄過剰症(ヘモクロマトーシス)
hemochromatosis
新宅治夫
(大阪公立大学大学院名誉教授・発達小児医学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・臓器に沈着した鉄を除去する治療と,鉄沈着により生じた臓器障害に対する対症療法に分けられる.

・鉄を除去する治療としては,瀉血が最も効果的な治療法であるが,輸血依存の難治性貧血においては適応とならない.

・瀉血が適当でない場合は薬物治療を行う.

◆病態と診断

A病態

・ヘモクロマトーシスは先天的あるいは2次的な原因で,全身の臓器に鉄が沈着し組織障害を引き起こす疾患で,肝硬変,糖尿病,皮膚色素沈着の3主徴のほか,心不全,関節の腫脹や疼痛,内分泌障害など多彩な症状を引き起こす.

・鉄代謝にかかわる遺伝子(HFEなど)の変異による原発性は欧米に多く,日本では鉄の過剰投与による続発性がほとんどである.

・男性に多く発症年齢は50歳頃で,女性は閉経後の60歳頃に発症する.

B診断

血清鉄の上昇(180μg/dL以上),トランスフェリン飽和度の上昇(60%以上),血清フェリチンの上昇(500ng/mL以上)があれば,肝臓や骨髄生検により鉄沈着を証明する.

・肝MRI IDEAL IQによる鉄測定法が診断に有用である.

◆治療方針

 臓器に沈着した鉄を除去する治療としては,瀉血が最も効果的な治療法であるが,貧血や低蛋白血症で瀉血ができない症例には鉄キレート剤の筋注で尿中排泄を促進する.重症の場合は点滴静注,血小板や白血球の減少があり鉄キレート剤の連日の注射が困難な症例には,内服薬で鉄の胆汁中排泄を促進する.

A鉄を除去する治療

1.瀉血

 Hb値12.5g/dL,フェリチン値50~100ng/mLを目標とする.1回200~400mL(鉄100~200mg) 週1~2回.

2.薬物治療

 瀉血が困難な症例.

a.鉄キレート剤による治療

Px処方例

 デフェロキサミン(デスフェラール)注(500mg/V) 1回1V 1日1~2回 筋注.維持量:1日500mg

b.患者が重篤であったり,ショック状態

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