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治療指針

甲状腺腫瘍
thyroid neoplasm
鈴木眞一
(福島県立医科大学主任教授・甲状腺治療学)

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GL甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018

ニュートピックス

RET遺伝子異常に関連したセルペルカチニブや,NTRK融合遺伝子陽性に関連したラロトレクチニブが進行再発髄様癌や甲状腺乳頭癌への適応が承認された.

治療のポイント

・基本的には外科手術であるが,良性腫瘍,悪性腫瘍,後者はさらに組織型によって治療方針が異なる.経過観察例も多く専門医の見解を参考にすべき.

◆病態と診断

A病態

・良性腫瘍には濾胞腺腫と過形成病変である腺腫様甲状腺腫がある.悪性腫瘍には濾胞細胞由来の乳頭癌,濾胞癌(あわせて分化癌),未分化癌と傍濾胞細胞由来の髄様癌がある.さらに甲状腺に発生するリンパ腫(甲状腺リンパ腫)があり,急激増大で発見され未分化癌と鑑別になることがある.

・濾胞腺腫と濾胞癌は細胞異型では鑑別できず,被膜・脈管浸潤ないし転移が確認されれば後者となりそれ以外が前者となる.

・一方,乳頭癌は特徴的な細胞異型により細胞診で診断が容易である.悪性腫瘍の90%近くを占め,リンパ節転移が多く,きわめて予後良好である.

・濾胞癌は血行性転移が特徴である.

・未分化癌はきわめて予後不良.

・髄様癌はCEA,カルシトニンを産生し,一部遺伝性で多発性内分泌腫瘍症2型に関連し,確定にはRET遺伝子検査を行う.

・リンパ腫は橋本病を前駆病変として発症する.

B診断

・一般的には触診,理学的,生化学的検査に加え超音波検査が第1選択であり,確定診断には穿刺吸引細胞診を行う.

・未分化癌やリンパ腫の場合には太針生検などの組織診を行う.

◆治療方針

 良性腫瘍では腫瘍径の増大や,圧迫症状,濾胞癌疑い,機能性結節や縦隔内甲状腺腫の合併などが手術適応となっている.

 乳頭癌は超低リスク,低リスク,中リスク,高リスクに分類され,高リスクでは甲状腺全摘,リンパ節郭清術後,ラジオアイソトープ(RAI)治療およびTSH抑制療法が推奨される.超低リスク

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