今日の診療
治療指針

副甲状腺機能亢進症
hyperparathyroidism
井上大輔
(帝京大学ちば総合医療センター・病院長)

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治療のポイント

・原発性副甲状腺機能亢進症の唯一の根治的治療は,病的副甲状腺の外科的切除である.

・国際的なガイドラインにより,無症候性の手術適応基準が提唱されている.

・薬物治療は,手術不能/適応外か患者が希望しない例の一部に適応となる.

・高Ca血症の改善を目的にCa受容体作動薬(カルシミメティクス)を,骨折予防を目的に骨粗鬆症薬を,必要に応じて投与する.

◆病態と診断

A病態

・副甲状腺腺腫,過形成,癌が自律的に分泌するPTHにより高Ca低P血症などをきたす.

・骨代謝は亢進し,皮質骨優位の骨密度減少と各部位の骨折リスク増加をきたす.

・高Ca血症は非特異的かつ多彩な症状をもたらすが,近年は無症候性が多い.

・長期的には骨折尿路結石症,腎機能低下などが主な臓器障害である.

B診断

・生化学的には高Ca血症とintact(またはwhole)PTHの高値により診断される.

・CaとPTHが必ずしも基準値上限を超えるとは限らないことに注意する.

・FECa<1%の場合,家族性低Ca尿性高Ca血症(FHH:familial hypocalciuric hypercalcemia)を疑う.

・頸部超音波検査およびMIBIシンチグラフィが局在診断に有用である.

・続発性副甲状腺機能亢進症は,腎不全やビタミンD欠乏などによりPTH分泌が亢進する.慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常症(CKD-MBD)については他項()を参照されたい.腎不全以外では,原因診断および原病治療が優先される.

◆治療方針

A局在診断がなされた手術適応例

 外科手術が唯一の根治的治療であり,薬物治療が手術と同等以上に有効であるというエビデンスはない.病的副甲状腺の摘除手術を行う.複数腺腫大,過形成の場合は多発性内分泌腫瘍(MEN:multiple endocrine neoplasia)を疑い,全腺摘除+半腺自家移植を行う.特に

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