今日の診療
治療指針

副甲状腺機能低下症
hypoparathyroidism
槙田紀子
(東京大学大学院准教授・腎臓・内分泌内科)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・本邦でも新しいPTH注射製剤の治験が行われている.

治療のポイント

・意識障害,全身けいれんなど急性期の治療にはCaの点滴補充を行う.

・維持治療として,本邦では活性型ビタミンD製剤の内服が原則である.

・合併症を避けるため,症状をきたさない範囲でなるべく低い血中Ca値(目安として7.5~8.5mg/dL)を目指し,尿中Ca排泄が高くならないよう留意する(尿中Ca/Cre比<0.3).

・Ca上昇に伴いリンは低下する.

◆病態と診断

A病態

・頸部手術後,副甲状腺の破壊,発生異常,生合成や分泌の低下などにより副甲状腺ホルモン(PTH)が低値となり,低Ca血症,高P血症をきたす疾患群である.

・臨床的には低Ca血症によるテタニー,意識障害全身けいれん,しびれなどが問題となる.また,白内障や大脳基底核の石灰化などをきたす.

B診断

・低Ca血症(補正Ca<8.5mg/dL)にもかかわらずPTHが不適切に低値(<30pg/mL)である.血中のリンは高値となる.

・低Mg血症はPTH分泌不全と作用不全のいずれの原因ともなるので,Mgの測定も重要である.

◆治療方針

 急性期治療と維持療法とがある.

A急性期治療

 低Ca血症によるテタニーや全身けいれん,意識障害をきたしている場合は,8.5%グルコン酸Caの経静脈投与を行う.静注中,徐脈,不整脈が出現することがあるので,心電図モニターを行う.

Px処方例 低Ca血症による全身けいれんや意識障害を伴う場合は,初期治療として1)を行う.軽度のテタニー・しびれにとどまる場合は,維持治療に加えて一時的に2)を処方する.

1)グルコン酸カルシウム(カルチコール)注(8.5%) 成人では1回10~20mL 10分以上かけて静注

2)乳酸カルシウム末 1回1~2g 1日3回 毎食後

B維持療法

 治療の目標は,症状をきたさない範囲でなるべく低い血

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