今日の診療
治療指針

クッシング症候群
Cushing syndrome
宗 友厚
(川崎医科大学教授・糖尿病・代謝・内分泌内科学)

頻度 あまりみない

治療のポイント

・治療の第1選択は責任病変の外科的摘出である.

・コルチゾール過剰の是正が目標である.

・重度の高コルチゾール血症(30μg/dL以上)の際は,直ちにメチラポンなどの投与を開始する.

◆病態と診断

A病態

・さまざまな原因により,グルココルチコイド(基本的にコルチゾール)の持続的過剰分泌をきたす疾患をクッシング症候群とよぶ.副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰によるACTH依存性のものと非依存性に大別され,前者は下垂体性と異所性,後者は副腎性と医原性に分類される.

・コルチゾール過剰は,脂肪分布の異常により満月様顔貌,中心性肥満,水牛様脂肪沈着,蛋白異化亢進により近位筋萎縮,血管脆弱化や結合織減少により皮膚の菲薄化・皮下溢血,伸展性赤紫色皮膚線条,などの特異的症候を呈する.眼球結膜の充血や眼瞼浮腫も多い.高血圧症,耐糖能異常,浮腫,月経異常,骨粗鬆症(病的骨折や腰椎圧迫骨折)などの非特異的症候も高頻度に認める.

B診断

・特徴的な徴候から本症を疑うことが大切である.

・非ストレス下に早朝の血中ACTHコルチゾールを同時に測定し,フィードバック機構に基づきバランスを考慮して解釈する.一方の検査値だけをみて正常範囲内にあると判断することは厳に慎むべきである.ACTH依存性の有無に応じ,内分泌検査や画像検査を進める.

・自律的なコルチゾール産生過剰を確認するため,24時間蓄尿による尿中遊離コルチゾール測定,夜間血中コルチゾール測定,overnight 1mgデキサメタゾン抑制試験(翌朝血中コルチゾール5μg/dL以上で陽性)を行う.

◆治療方針

 治療の第1選択は責任病変の外科的摘出である.医原性ではステロイドの中止であるが,副腎不全症状に注意しつつ漸減する.

A外科的治療

 下垂体性は経蝶形骨洞的下垂体腺腫摘出術(TSS:transsphenoidal surgery,H

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