今日の診療
治療指針

多発性内分泌腫瘍症
multiple endocrine neoplasia(MEN)
河本 泉
(関西電力病院・消化器外科部長(大阪))

頻度 あまりみない

治療のポイント

・多発性内分泌腫瘍症(MEN)はMEN1とMEN2に分けられ,ともに常染色体優性遺伝疾患である.

・MENの可能性の高い患者を診察した場合は他のMEN関連病変の有無や家族歴を確認する.

・関連病変の異時性・同時性多発に注意を要する.

Ⅰ.多発性内分泌腫瘍症1型(MEN1)

◆病態と診断

A病態

・腫瘍抑制遺伝子であるMEN1遺伝子の変異が原因であり,主な関連病変は原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT:primary hyperparathyroidism)が罹患率約90%以上と最も高く,次いで膵・消化管神経内分泌腫瘍(NET:neuroendocrine tumor),下垂体腺腫であるが,ほかにも副腎皮質腫瘍や胸腺・気管支NET,皮膚腫瘍がみられる.

・膵・消化管NETの肝転移と胸腺NETは予後因子として重要である.

B診断

・以下のいずれかの場合,MEN1と診断する.

1)主な関連病変のうち2つ以上を有する

2)主な関連病変のうち1つを有し,MEN1の家族歴がある

3)主な関連病変のうち1つを有し,MEN1遺伝子の変異が確認されている

・膵・消化管NETのうち,多発性膵NET,若年性インスリノーマはMEN1を疑う根拠となり,ガストリノーマもMEN1に合併する場合が多いことに注意を要する.

MEN1遺伝子変異の型と臨床像に相関がみられず,血縁者内でも臨床像が異なる.

◆治療方針

 病変の異時性・同時性多発や内分泌症状の有無,悪性度を考慮した外科切除・薬物治療・経過観察を行う.

Ⅱ.多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)

◆病態と診断

A病態

・癌原遺伝子であるRET遺伝子の変異が原因であり,臨床像によりMEN2AとMEN2Bに分ける.

・MEN2A:甲状腺髄様癌褐色細胞腫,PHPT.

・MEN2B:甲状腺髄様癌褐色細胞腫,マルファン症候群様徴候,舌粘膜神経腫.

・MEN2の各病変はそれぞ

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