今日の診療
治療指針

ステロイドの副作用と対策
management of glucocorticoid-induced adverse events
森信暁雄
(京都大学大学院教授・臨床免疫学)

治療のポイント

・ステロイドの副作用は,免疫抑制による感染症と代謝への影響によるものが主である.

・ステロイドの減量中止により改善する副作用もある.

・ステロイド使用前に副作用について患者に説明しておく.

・免疫抑制薬を併用するなどして,原疾患の治療に必要な量のステロイドは使用する.

A感染症

 ステロイドは炎症抑制,免疫抑制をもつので,易感染状態となる.一般の感染症に加え日和見感染のリスクが高くなる.時間的余裕があればステロイド大量投与前に齲歯,歯周囲炎を治療する.

1.結核

 ステロイドにより結核の再燃のリスクは上昇するため,中等量~大量のステロイドを使用する場合にはインターフェロンγ遊離試験や胸部CTなどで結核のスクリーニングをする.潜在性結核感染症と診断した場合は,イソニアジド(INH)を6~9か月間投与する.INHが服用できない場合は,リファンピシン(RFP)を4~6か月投与する.RFPを使用する際は,ステロイド量を1.5~2倍程度増量する.

 潜在性結核感染症には,原則としてINHを使用する.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)イソニアジド(イスコチン)錠(100mg) 1回3錠 1日1回 食後

2)リファンピシン(リファジン)カプセル(150mg) 1回3カプセル 1日1回 食前

 結核菌が検出された場合は,結核の治療を行う.

2.ニューモシスチス肺炎

 ステロイド大量投与時や中等量投与で免疫抑制薬併用時には,ニューモシスチス肺炎の予防を行う.ステロイド中等量以下になったら漸減中止を考慮する.第1選択としてST合剤を使用する.副作用で使用できない場合に限り,アトバコンを使用する.

Px処方例 下記1)を用いる.

1)スルファメトキサゾール・トリメトプリム(ダイフェン)配合錠 1回1錠 1日1回 食後

 ニューモシスチス肺炎を発症したらST合剤大量とステロイドで治療する.2)と3)を

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