今日の診療
治療指針

神経筋疾患の免疫グロブリン大量静注(IVIg)療法
intravenous immunoglobulin(IVIg)in neurological disorders
神田 隆
(山口大学教授・神経・筋難病治療学)

A免疫グロブリン大量静注(IVIg)療法

 免疫グロブリン製剤はヒト血液から精製された血液製剤であり,多数の個体から得られたIgGを主成分とする.現在保険適用を有する神経筋疾患は表1に示す7つであるが,このほかにもさまざまな免疫性神経筋疾患での有効性がいわれており,治験も進行中で保険適用疾患は拡大している.表1に示すように,疾患により保険適用になっている製剤が異なることには注意が必要である.しかし,各製剤の基本的な薬効は同等と考えられており,相互間での適応拡大も進んでいる.

 IVIgには複数の作用機序が想定されている.抗イディオタイプ抗体による病原自己抗体の中和,Fc部分がマクロファージのFc受容体を占拠することによる標的抗原との結合阻害,活性化補体の阻害などが免疫性神経筋疾患への有効性の根拠として挙げられているが,確定したものはない.主成分であるIgGの血中半減期は約3週間であり,静注により血中IgG濃度は急峻に上昇するが,平均2か月前後で投与前値に復する.このため,慢性疾患では反復投与(維持投与)が必要とされることがある.血中濃度を安定化させる方策として皮下投与製剤〔pH4処理酸性人免疫グロブリン(ハイゼントラ)〕も発売されており,現在は慢性炎症性脱髄性多発根神経炎にのみ保険適用を有している.

B投与法と留意点

 1日あたり400mg/kgの5日間連続投与が基本的な使用法である.慢性炎症性脱髄性多発根神経炎などでは,維持療法として1g/kg(1~2日で投与),3週間ごとの点滴静注を行う.初回投与時にショックやアレルギーなどの急性の副作用をきたすことが多い.このため,0.01mL/kg/分で開始し,30~60分経過観察後0.03mL/kg/分に速度を上げる.IgA欠損症ではアナフィラキシーをきたしやすく,投与前の免疫グロブリン値の測定は必須である.その他の副作用については

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